6月26日、雪が残る富士山では、約100人の人々が参加して雪かきが行われました。山小屋など関係者の方々がきたる山開きに向けての準備を進めています。安全面などから夏の限られた時期にしか、一般の人々は登山ができません。夏の始まりとともに登山シーズンにも突入し、登山愛好家の方々にとっては待ちわびた季節になることでしょう。そんな登山シーズンに行われる「山開き」は昔から深い意味をもって行われていました。いったいどんな行事なのでしょうか?
限られた人のみに許された山登り
最近では「山ガール」という言葉が浸透するほど、一般の人々が気軽に山登りできる環境が整えられています。ですが、かつての山登りは誰しもに許されたものではなかったのです。
かつて、山は信仰の対象とされていました。国土の7割を山地で占める日本では、山は自然の恵みを与えてくれる神聖な場所とされていたため、山に登ることができるのは修行者や徳の高い僧侶にしか許されていなかったのです。一般の男性や女性は山に入ることを許されていませんでした。
なぜ、山開きを行うのか?
限られた人にしか許されていなかった入山。ですが、江戸時代中期以降は、一定の期間で一般の人々にも入山が許されました。そのときに、神様に一般人の入山を許していただくための儀式が「山開き」だったといわれています。
誰もが登山できるようになった今では、安全祈願としての山開きの意味合いが強くなってきました。また、最近では山のPRとしての効果を期待する側面もあるようで、豚汁をふるまったり、山小屋の主人の話を聞いたりなど楽しめるイベントして開催している山も数多くあるようです。
代々受け継がれている、富士山の山開き
現代のイベント化された山開きもある一方で、伝統的な山開きを重んじているのが富士山です。
富士山が世界文化遺産に登録された理由のひとつが「信仰の対象」であったことは有名ですね。そのため、富士山の山開きは、かつて富士山の噴火を鎮めたとされる神様を祀る富士山本宮浅間大社で行われています(富士宮ルートの場合)。
また、富士山は複数の登山ルートがあるので、ルートごとに山開きが行われるのも特徴です。今年でいうと
●7月1日に山梨県側から登る吉田ルート
●7月10日に静岡県側から登る富士宮ルートや御殿場ルート……か山開きとなります。
いまや世界中から登山客が訪れる日本の象徴である富士山ですから、山開きを楽しみに待っている人も多いことでしょう。
──山開きが行われても、まだ雪が多く残る場所もあります。毎年多くの人か山登りを楽しみますが、一方で準備不足や軽い気持ちから事故も増えています。事前に装備をしっかり準備して、山登りの最中は安全性を忘れずに、山登りを楽しみたいものですね。