本日から六月となりました。1日は衣替えの日でもあり、六月といえば梅雨のシーズンです。今年はすでに5月28日に、例年より8日も早く九州北部や四国で梅雨入り。関東も一挙に湿度と気温が増し、雨が多くなり、そろそろ梅雨かなという気候です。六月の和風月名は「水無月(みなづき)」。その意味合いから紐解いていきましょう。
六月の和風月名は「水無月」。水が無い月なのか、水の月なのか
ご存じのように旧暦で使用していた月の呼び名を「和風月名(わふうげつめい)」といいます。この和風月名は、旧暦の季節や行事に合わせつけられたもの。今なお暦で用いられていますが、現在の季節感とは1~2カ月の差異が生じているようです。
一年の六番目の月ということから、「六月」。六月と書いて「みなづき」と訓ませるのは、記紀万葉の時代から現代まで同じなのだとか。その「みなづき」をそのまま「水無月」と漢字をあてたのか、六月の代表的な和風月名は「水無月(みなづき)」と綴ります。その由来には諸説あり、梅雨が明けて暑くて水が涸れるという説。反対に、田植えもすみ、田圃に水を張る水張り月という説。この他にもいろいろあるようです。しかしながら、みなづきの「な」は、「無」の字があてられてはいますが、本来は「の」の意という説もあり、六月(みなづき)は「水の月」「田圃に水を引く月」という意味合いと思ってもさしつかえなさそうです。
水が涸れ、「水が無い月」というよりは、六月は「水の月」。そう思っておいたほうが、なんとはなしに梅雨の時期に訪れる、現代の六月にもふさわしい気がします。
梅雨のころ花開く、愛の花「アガパンサス(紫君子蘭)」
六月の花としては、誰もがまず思い起こすのが、紫陽花でしょうか。空気が重く湿り気を帯び出すころ、毬のような花房を枝にたわわにつけた紫陽花が、いつの間にかどんどん花開き、白から淡いブルーに染まりゆきます。梅雨の時期の曇天に冴える青いグラデーションは、爽やかさを感じさせる六月の風物詩。紫陽花寺と呼ばれる名所には、人々がこぞって訪れます。このほか水の月にふさわしく、あやめや菖蒲など、青い花が多い六月。もう一つ、忘れてはならない青い花として、「アガパンサス」があげられます。
南アフリカ原産とされ、明治時代に渡来したアガパンサス。紫陽花と同じく梅雨の頃から咲き始め、その姿は、ちょうどネギ坊主を巨大化したような趣。すっと長く伸びた花茎がとても優美で、先端に数十輪もの青紫色の小花を、放射状に丸く、火花を散らすように咲かせます。
和名の「紫君子蘭(むらさきくんしらん)」は、君子欄の花と葉がよく似ていることからつけられたようですが、全くの異種。アガパンサスの園芸品種はおよそ300種以上もあり、花色は紫、青紫、白など開花時期や丈なども様々なのだそうです。
属名でもある「アガパンサス(Agapanthus)」とは、ギリシア語の「アガベ(agape愛)」と「アンサス(anthos花)」の2語から生まれ、「愛の花」という意味合い。六月のジューンブライドがこの花一本だけのブーケを、妖精の魔法の杖のように手にもちバージンロードを歩くのも、最高にファンタジックかつフォトジェニックかもしれません。
残り半年の無病息災を祈る和の菓子「水無月」
六月は一年のちょうど半分。今月が終われば、早くも一年の半分が過ぎてしまったことになります。昔から六月末日は、各地の神社で行われる「夏越しの祓え」の日。このころに食す季節の和菓子に「水無月」というものもあり、これは、氷に見立てた三角形のういろうの上に、邪気を祓うあずきを散らしたものです。今月末日にはぜひ、茅の輪くぐりで厄を落とし、水無月を食べて邪気を祓い、真夏の猛暑に備えましょう。
ひとたび梅雨に入れば、幾日も雨が降り、じめじめとうっとうしい日々が続きます。出掛ける気分になれない雨天の折は、晴耕雨読とばかりに読書三昧ときめこむのもいいかもしれません。何を読むか迷ったら、ドイツ・ロマン派の作家・ノヴァーリスの「青い花」など、いかがでしょうか。