「夏も近づく八十八夜……」という歌詞でおなじみの文部省唱歌『茶摘み』。八十八夜とは立春から数えて88日目のことを指し、八十八夜をはさんだ4月末~5月中旬が、ちょうど新茶のシーズンとなります。
そこで今回は、八十八夜のお茶話と題して、日本茶(緑茶)にまつわる雑学をあれこれご紹介。あっと驚く新茶のお値段や、意外と知らない日本茶の種類など、ティータイムの話題にもどうぞ!
新茶1kgが108万円! 1杯あたり約1000円!?
「新茶」とは、その年で最初に新芽を摘んだお茶のことで「一番茶」とも呼ばれます。新茶には冬に蓄えられた旨み成分が豊富に含まれており、昔から八十八夜に摘まれた新茶は縁起がよいと、とくに珍重されています。
ちなみに、つい先日(4月24日)静岡茶市場で行われた新茶の初取引では、富士宮市の茶農家が栽培した品種「さえみどり」に、史上最高額となる1kg・108万円の値がついたそうです。108歳の「茶寿」にかけた金額で、単純に計算すると「湯飲み1杯あたり約1000円」になるとか!
一体どんな味がするのか、どんな香りがするのか……ちょっと気になりますよね。
煎茶・玉露・番茶・ほうじ茶……これってどう違うの?
お茶には、緑茶・ウーロン茶・紅茶・黒茶などいろいろな種類がありますが、日本で生産されるお茶のほとんどは、茶葉を蒸して乾燥させた緑茶です。
また、同じ緑茶でも茶葉の栽培方法や製造工程などの違いによって、さまざまな種類の日本茶になり、味や香りもそれぞれに特徴があります。
【日本茶の主な種類】
◆煎茶/日本茶の中で最もよく飲まれている代表的なお茶。新鮮な茶葉を蒸して発酵を止め、針状に乾燥させて仕上げます。
◆深蒸し煎茶/通常の煎茶よりも茶葉を長く蒸し、細かい粉状に仕上げたお茶です。深みのある濃厚な味わいで、入れたお茶の色も濃いめです。
◆玉露/日光をさえぎって育てた茶葉から作られる高級茶。苦み・渋みが少なく、海苔のような香りと強い甘み・旨みが特徴です。
◆茎茶/玉露や煎茶の仕上げ工程で、新芽の茎だけを選別して作られます。清々しい香りと爽やかな甘味、ほどよい渋みが特徴。
◆番茶/摘採期・品質・地域などで、日本茶の主流から外れた番外のお茶を指します。多くは新芽を使わず成熟した茶葉で作られます。
◆ほうじ茶/煎茶・番茶・茎茶などを強火で炒って、香ばしさを引き出したお茶です。独特の豊かな香味と、さっぱりとした後味が楽しめます。
日本茶を美味しく入れる3つのポイント
お湯に溶け出しているお茶の成分は、わずか0.3%。
より美味しくお茶を入れるためには、茶葉だけでなく「水」「温度」「急須」にもこだわって、風味や香りを存分に引き出すのがポイントです。
【ポイント1・水】
お茶に適した水は、微酸性の「軟水」です。日本の水はほとんどが軟水なので、水道水でもかまいませんが、塩素が含まれているため、必ず沸騰させてから使用しましょう。
市販のミネラルウォーターを使用する場合も、硬度の数字が低い軟水の商品を選んでください。外国産の多くはカルシウム・マグネシウムを多く含む「硬水」なので、お茶を入れるのには適しません。
【ポイント2・温度】
お湯の温度は、それぞれのお茶の美味しさを引き出す重要なポイントとなります。温度によって浸出するお茶の香味成分が異なるからです。たとえば、渋み成分のカテキンは80度以上の高温で、旨み成分のアミノ酸は50度以上の低温で浸出しやすくなります。
煎茶の場合は、ほどよい渋味と旨み成分を引き出す70~80度。玉露の場合は、旨み成分をじっくり引き出す50度程度の低温。香りが特徴の茎茶・番茶・ほうじ茶は、100度の熱湯で香味や渋みの成分を引き出します。上質な深蒸し煎茶や玉露は、冷水でも美味しく入れられます。
【ポイント3・急須】
お茶の風味を損ねるので、さびた茶こしや洗剤のニオイがついた急須は避けましょう。
また、急須の注ぎ口に付いているビニールキャップは、運送時の破損防止用なので、使う時には必ず外してくださいね。つけたまま使用すると、茶渋や水垢がたまって不衛生なうえ、ビニールがお湯で溶けることもありますのでご注意を!