4月も下旬に差しかかり、穏やかな暖かい春の気候がやってきました。お出かけにはうれしい季節ですね。
そんな春をいっそう彩る伝統行事が京都にあります。「春の踊り」といえば、春の京都を彩る風物詩として、全国各地から大勢の観光客が 集まります。踊りの場は、ふだんなかなか見ることのできない舞妓さんの華麗な姿が披露される貴重な場。さて、そんな「春の踊り」とは一体どんなものなのでしょう? 長きにわたり愛され続ける春の踊りに迫ります。
なぜ、京都は踊りが盛ん?
京都には「花街」と呼ばれる区域があります。花街とは、芸妓遊びができるお店が集まっている区域のこと。芸妓、舞妓という呼び方をしますが、これらは京都独特の呼び名だそう。中でも「舞妓」は京都ならではの呼び方といわれています。他の地域の花街では「芸者」という呼び方が一般的なようです。
舞妓の「舞」というのは、基本的には踊り手が一人で披露する場合を指します。花街のお店で披露するようなときは「舞」といえるでしょう。一方、京都で「踊り」と呼んでいるのは団体で披露する場合を指します。ですので、「春の踊り」は各花街の舞妓さんたちがズラリと揃う一大イベントなのです。
個性の異なる五花街の踊り
京都には五つの花街があります。祇園甲部、宮川町、先斗町、上七軒、祇園東、これらを総称して「五花街(ごかがい)」と呼ばれています。これら五花街のうち、祇園東の「祇園をどり」は秋のみ行われ、その他の花街ではそれぞれ異なる流派の踊りが披露されます。見比べてみるのもおもしろいかもしれませんね。
【祇園甲部/都をどり】
1872年の京都博覧会の余興として開始。「都をどりは、よいやさ」のかけ声で幕が開くのが伝統となっています。演目は、その年の干支など話題性を取り入れた斬新なテーマが多いことが特徴です。
【宮川町/京おどり】
1950年に初演が行われたという比較的新しい踊り。京都の歳時記や年中行事などを演目に取り入れるなど、ユニークな内容が特徴的。最後は「宮川音頭」が披露されることで有名。
【先斗町/鴨川をどり】
1872年初演。都をどりとともに京都博覧会の余興として披露されたのが始まり。伝統的な技術の高い踊りが見られることから、五花街の中でもっとも上演回数が多く人気が高いとされています。
【上七軒/北野をどり】
1952年初演のもっとも新しい踊り。北野天満宮の大萬燈祭の記念として上演されたのが始まり。他の踊りに比べて規模は小さいものの、色鮮やかな衣装が目をひきます。
もっと近くで見たくなったら……
これらの春の踊りは毎年大盛況で、チケットは早々に完売することもあるほど。最近では海外からの観光客も増えてきており、旅行会社のツアーで見に行く人が多いようです。3月下旬に始まる北野をどりを筆頭に、京おどり、都をどりと続き、5月の鴨川をどりまで次々と開催されていきます。北野をどり、都をどり、京おどりは運がよければ桜の開花時期と重なる日もあるため、花街周辺はたいへんにぎわいます。
せっかくならば、一度はぜいたくに舞妓さんの芸を近くで見たいという人もたくさんいることでしょう。ただ、京都で舞妓さんを呼ぼうというのにも、「一見さん、おことわり」といった店もかなりあります。ですが、最近では一見さんでもなじみの人に紹介してもらうといったサービスもあるようなので、興味のある人はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
―― 桜が散ってもまだまだ春を感じられるのが京都。それはやはり伝統的に続く「京の踊り」があるからでしょう。日本人ならば一度は舞妓さんのあでやかな踊りを感じてみたいものですね。