台風5号は12日(月)頃に東北地方へ上陸する可能性があります。今回の台風は岩手県岩泉町を中心に甚大な被害をもたらした8年前(2016年)の台風10号に進路が似ています。岩手県沿岸では8年前を上回る記録的な大雨となる恐れがあり、河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要です。また、台風の進路によっては周辺地域でも大雨となる可能性があるため、今後の最新の情報をこまめに確認しつつ、避難等は雨が強まる前の10日(土)までに行うようにして下さい。
●岩手県沿岸を中心に記録的な大雨に 48時間で400ミリに達する恐れも
台風5号は暴風域を伴ったまま北上を続けて、12日(月)頃には東北地方に上陸する恐れがあります。台風周辺の暖かく湿った空気が流れ込むため、台風が近づく前から雨や風が強まる予想です。
東北の太平洋側では10日(土)未明から台風の外側の雨雲がかかる所があるでしょう。その後、11日(日)になると湿った空気の影響により岩手県の沿岸を中心に活発な雨雲がかかる予想です。また、宮城県の西部や福島県浜通りでも発達した雨雲がかかりやすく、雨の降り方が強まるでしょう。12日(月)になると台風本体の雨雲がかかる予想で、太平洋側ほど雨量がさらに多くなる恐れがあります。台風の動きが比較的遅いため、大雨が長く続く可能性もあり、警戒が必要です。
三連休を直撃する今回の台風ですが、8年前、2016年の台風10号に進路が似ています。この台風は初めて東北地方の太平洋側に上陸し、岩手県沿岸を中心に記録的な大雨となりました。岩手県岩泉町では、記録的な大雨の影響で老人ホームが流されるなど、甚大な被害が発生しました。当時の総雨量は、多いところで48時間雨量が300 ミリを超える大雨となりましたが、今回はその8年前の雨量を上回る恐れがあります。日本気象協会の予測によると、岩手県の沿岸では48時間雨量が400ミリに達する恐れがあり、甚大な被害が発生する可能性があります。
また、雨だけではなく、東北太平洋側では暴風や高波にも警戒が必要です。
【風の予想】
11日(日)に予想される最大風速(最大瞬間風速)
東北日本海側 海上 15メートル (25メートル)
東北日本海側 陸上 10メートル (20メートル)
東北太平洋側 海上 20メートル (30メートル)
東北太平洋側 陸上 15メートル (30メートル)
その後も、12日頃にかけて、海上を中心に非常に強い風や猛烈な風が吹くおそれがあります。
【波の予想】
11日(日)に予想される波の高さ
東北太平洋側 7メートル うねりを伴う
その後も、12日頃にかけて、猛烈なしけとなるおそれがあります。
●既往最大比 岩手県沿岸では150%超 災害発生危険度が極めて高い状況に
一番上の図は、12日正午までに予想される48時間降水量の最大値とその降水量が、それぞれの場所において過去最大の降水量と比較して何割に達するのか、ということを示しています(既往最大比※)。
これが100%前後に達すると、甚大な被害の発生する可能性が高まり、150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があるという研究結果があります。
12日正午までの48時間に岩手県沿岸を中心に過去最大雨量の120~150%もの雨が降ると予想され、甚大な災害がさらに拡大する恐れが高くなっています。
8年前の災害を思い出して下さい。ハザードマップや非常用品の確認、避難場所を確認するなど大雨への備えを早めにお願いします。また、最新の気象情報を確認しつつ、雨が強まる前の10日(土)までに避難等を検討してください。大雨への備えや避難する際のポイントは次のブロックにまとめました。
※ 既往最大比とは、解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のことです。
●大雨への備えと避難のポイント
今回の台風では、東北太平洋側を中心に大雨が予想されていて、土砂災害や河川の増水、氾濫などの恐れがあります。
万が一に備えて非常用グッズをリュックにまとめておきましょう。懐中電灯などの電池が切れていないか確認して下さい。
また、万が一の断水に備えて、飲料水やトイレなどの生活用水の確保をして下さい。生活用水の確保は、浴槽に水を張っておくとよいでしょう。
そして、避難する際のポイントは2つあります。
1つめは、早めの避難を心掛けることです。特に、お年寄りや障害のある方など、避難に時間のかかる方がいらっしゃる場合は、大雨になってしまう前に行動してください。また、夜中に大雨が予想される場合は、なるべく明るいうちに、避難所など安全な所へ避難することが重要です。
2つめは、より安全な所へ避難することです。これまで、土砂災害の多くは、木造家屋の1階で被害にあっています。すでに雨が強まっているなど、どうしても避難場所への移動が困難な場合は、近くの頑丈な建物の2階以上へ移るのも、選択肢の一つです。家の中に留まる場合も、斜面から離れた部屋や、2階以上の部屋へ移ってください。
万が一、土石流が発生した場合は、土砂の流れる方向に対して直角に、できるだけ高い所へ避難することが、命を守ることにつながります。