季節の歩みは、スローペースですが着実に進んでいます。「時雨」は、冬型の気圧配置になると、気温よりも相対的に温かい海面から対流性で水平規模の小さい雲が発生、次々と通過するために、雨が降ったり日が差したり、変わりやすい天気となることです。初冬の季節感を表す言葉として、古来から多くの人に好まれ、冬の季語として和歌にも使われてきました。
●この時期は「時雨虹」の季節 幸運のサイン「ダブルレインボー」も
「虹」は、太陽の光が雨粒に当たり、屈折して入り中で反射、更に屈折・分光することで、七色に分かれて見える現象です。光が波長によって屈折率が異なるために生まれる自然の造形美なのです。天気の変わりやすい「時雨」の時期は、大気中に太陽光と雨粒が共存している為、「時雨虹」が見られるチャンスが多くなります。また、普通の虹(主虹)の外側にもう一つ色が薄い虹(副虹)が見えるダブルレインボーになることもあり、幸運のサインとされているようです。これからの時期、日差しは次第に貴重になっていきます。「晴れ間が広がる」とは言いにくくなりますが、「晴れ間も広がる」日は、太陽と反対の方向に「虹」が出現していないか探してみるのも良さそうです。
●北陸4市の雨の出現率 いずれも暖候期より「時雨」の時期の方が高い
北陸4市の年間の日別天気出現率から、雨の出現率の高い日のランキングを見てみましょう。
その結果、各市の1位は、福井で72.4%(11/15)、金沢で79.3%(11/15、12/4)、富山で82.8%(12/4)、新潟で73.3%(11/17)となり、いずれも、梅雨時などの暖候期よりも、晩秋から初冬の「時雨」の時期が、最も雨が降りやすい時期となっていることが分かりました。
念の為、トップ10の暖候期の有無を確認すると、福井は8位・9位、金沢は4位・8位、富山は4位・8位・9位、新潟は3位と10位と、4市のいずれもわずか2~3日程度にとどまっており、雨の出現率の高いランキングの上位は、「時雨」の時期の方が圧倒的に多くなっていることが確認できました。
●新潟の日別の天気出現率
上の折れ線グラフは、新潟の日別天気出現率で、緑が雨、青が雪、赤が晴れを示しています。11/8の立冬の頃から、晴れの出現率が格段に減り、12月上旬にかけて時雨の雨の出現率が最も高くなっています。新潟の日別の天気出現率で雨の確率が最も高い11/17もこの期間に含まれており、確率は73.3%となっています。
その後の12月中旬頃からは、晴れの日は更に減り、雨の出現率も徐々に減少、12/22の冬至の頃からは雪の出現率が明らかに優勢となり、本格的な冬へと季節は進んでいきます。
●越中国主として赴任した「大伴家持(718年~785年)」の歌
朝廷に仕える役人であり歌人でもあった「大伴家持」は、746年に越中守(現富山県の地方長官)に就任。万葉集の編纂にも携わり、自身も多くの歌を残しました。とりわけ5年間の越中の赴任期間中は、最も充実した創作活動をおくっていたようです。
この歌は、家持の部下が、時雨の冷たい雨が降る中、越中の国情報告書を手に、徒歩で平城京(奈良)まで険しい道のりを越えていくことに関して、家持が部下を気遣う気持ちが込められているそうです。
●金沢市出身の小説家「泉鏡花(明治6年~昭和14年)」の歌
浅野川界隈の飴屋・油屋に、「時雨」の雨が急に降ってきた様子を詠んでいるそうです。当時は、現在のように雨雲レーダーを見ながら行動するということはありません。日が差していたにもかかわらず急に雨が降り出し、店主はかなり慌てて右往左往していたのかも知れません。