台風15号は、あす14日にかけて次第に小笠原諸島から離れますが、台風としては、一時、最強の「猛烈な」勢力に発達し、中心気圧900hPaと今年一番の発達した台風となりました。10月の台風は「猛烈な」勢力に発達しやすいその理由は?
●台風15号 一時 猛烈な勢力に発達
台風15号は、10月7日にトラック諸島近海で発生。海面水温30℃と高い領域を北上し、11日15時に「大型で猛烈な」勢力に発達。猛烈な勢力とは、一番強い勢力で、台風2号、台風9号に続き、今年3個目。11日21時～きょう13日午前6時まで中心気圧は900hPaと、今年一番発達した台風となりました。
13日正午現在、「大型で猛烈な」勢力から「大型で非常に強い」勢力に変わり、父島など小笠原諸島の東海上を北東に進んでいます。この後、台風15号は上空の偏西風(強い風)にのり、スピードを上げる予想です。小笠原諸島からは次第に離れる見込みですが、今夜(13日)にかけて強風に注意し、あす14日の明け方にかけては高波に警戒が必要です。
●台風 「猛烈な」勢力まで発達しやすいのは10月
過去(1977年～2023年台風15号まで)、「猛烈な」台風(最大風速が54m/s以上)の台風は109個あり、月別でみると10月が26個(23.9%)と一番多くなっています。図にはありませんが、さらに細かく月(上中下旬)でみると、10月上旬・中旬、9月中旬の割合で多くなっています。
●10月の台風 勢力が強まる理由
【理由その① 海面水温は夏より秋の方が高いから】
台風は海面から蒸発する水蒸気をエネルギーに発達します。海面水温が高いと水蒸気が多量に供給されるため発達しやすくなります。水は熱しにくく冷めにくいため、気温のピークより遅れて高くなります。日本近海の海面水温は夏よりも秋の方が高い事が多いです。特に、今年(2023年)9月の平均海面水温は、統計を開始した1982年以降で9月として最も高く、平年差が+1.6℃と大きくなりました。現在も南の海上は30℃位と高く、日本近海も平年より高く、太平洋沿岸で27℃くらいあります。
一般的に台風は海面水温が26～27℃の海域で発生するといわれていますが、大気の状態も重要な要因であり、海面水温が高いだけでは台風の発生・発達につながりません。ただ、新たに熱帯低気圧や台風が発生した場合、発達を助長するような高い海面水温が広がっているため、今後も注視が必要です。
【理由その② スピードが速い】
秋は上空の強い風(偏西風)が日本付近に南下。台風は日本付近に近づくと、偏西風に乗り加速。台風が加速すると台風を押し流す風と台風自身の風が合わさり進行方向の右側で特に強くなります。結果、強い勢力のまま接近しやすくなるからです。
●10月に発生した台風災害
2019年10月は、台風19号が伊豆半島に上陸後、関東を通過。1都12県に大雨特別警報が発表され、甚大な被害をもたらしたのは記憶に新しいです。過去には、世界で一番中心気圧が下がった記録を持つ台風が10月に発生しています。1979年台風20号は、10月6日にトラック島近海で発生、沖ノ鳥島近海で中心気圧870hPaを記録(ハリケーンやサイクロンを含めて史上最低気圧)、10月19日10時前に和歌山県白浜町付近に上陸(過去6番目に遅い上陸)後、本州を猛スピードで駆け抜け暴風など被害をもたらしました。
台風シーズンは9月というイメージがありますが、10月も油断禁物。また、11月に上陸した台風もあります。上陸がもっとも遅い記録は、1990年11月30日(和歌山県白浜町の南)です。
●今年は台風の発生数少ない 今後どうなる?
今年は1月～9月までの台風発生数は14個。平年は19個くらいなので、かなり少なくなっています。過去(1951年の統計開始～2022年まで)、1月～9月までの台風発生数が14個以下の年をみてみると、10月～12月は少ない発生数を取り戻すかのように平年以上に発生している年が多くなっています。
2020年は9月までの台風発生数は13個でしたが、10月～12月に10個の台風が発生(10月に6個、11月に3個、12月に1個)、年間発生数は23個と帳尻を合わせるかのように多数発生しました。
10月は太平洋高気圧の勢力が弱まるため、日本の南海上に進路をとる台風が多くなります。ただ、この先1か月の気象モデルをみると、まだ、南から熱帯擾乱が北上しているものもあります。10月もまだ台風シーズン。日頃からハザードマップの確認や、側溝の掃除など、備えは万全にしておきましょう。
参考:気象庁HP、デジタル台風
