
絶体絶命のピンチでも、阪神石井大智投手(28)はホームを踏ませなかった。9回2死の土壇場で逆転し、1点リードで上がった9回。招いた1死満塁のサヨナラピンチを踏ん張り抜いた。球団単独3位となる42イニング連続無失点。1969年(昭44)に江夏豊がマークした記録を抜いた。
「(坂本)誠志郎さんがいいリードをしてくれているので。自分もそこに投げ切ろうという。そういうところが、ただ結果としていいのかなと思います」
先頭の代打ビシエドに左前打、その後死球と桑原の左前打で1死満塁。内野陣が1度集まり、安藤投手チーフコーチからは「任せたぞ」と声をかけられた。直後、三森に放たれた遊撃へのライナーを小幡がダイビングキャッチ。一瞬ほころびかけた表情をすぐに締め直し、最後は神里を中飛に打ち取った。「野手のみなさんのおかげです。(最後は)安堵(あんど)しました」。納得顔だった。
22日のヤクルト戦(神宮)で並んだレジェンド江夏を一気に超えた。プロ野球新記録をつくった自身の連続試合無失点記録も、43試合に更新。今季46試合目、失点はわずか4月4日の巨人戦の1試合だけで、最強の無双状態が続いている。
昨季もキャリアハイとなる56試合に登板した。重ねた登板の数だけ、自分のデータも相手に蓄積される。今季の登板では、相手の反応にも変化を感じている。
「去年とは全く打者の対応が違う。どんな球種を投げるというのも、全部分かる状態で今年を迎えているから。やっぱり去年よりはめちゃくちゃしんどい」
それでも対策を講じる相手打者を上回り、無失点投球を積み上げている。難しさを感じながらも、ブレーク翌年のジンクスを全く感じさせない0魔神ぶりだ。
防御率0・20は前回から不変。1試合を抑えただけでは良化しない次元まできた。シーズン残り28試合。藤川監督が「心臓」と表現するブルペンの中心が、2年ぶりのゴールテープを切りにいく。【波部俊之介】