
<全国高校野球選手権:沖縄尚学5-3仙台育英>◇17日◇3回戦
仙台育英(宮城)が延長タイブレークの接戦に敗れ、2年ぶりの8強進出を逃した。3-3の11回表に2失点。その裏は無得点に終わった。エース左腕の吉川陽大投手(3年)が10回まで3失点10奪三振と踏ん張ったが、11回に力尽きた。
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3-5の延長11回2死三塁。9番吉川陽大投手(3年)に、代打は送られなかった。打席に入ったエースの目には、すでに涙があった。「打力に自信のない自分を送り出してくれた須江先生(監督)への感謝と、仲間の顔が浮かんで…」。マウンドには、投げ合った沖縄尚学のエース末吉がいた。フルカウントから強い当たりを打つも二塁手が捕球し、素早く一塁へ。一塁手が喜ぶ姿が目に映った。それでも頭から飛び込んだ。立ち上がれなかった。
試合後のベンチ前、女房役の川尻結大捕手(3年)と最後のキャッチボールを行った。このままずっと、川尻に投げ続けていたかった。泣きじゃくりながらクールダウンを終えると、近づいてきた川尻から頭をなでられ、声をかけられた。「お前がいたからここまでこられた。お前は泣くべきじゃない」。
2人でたどり着いた景色だった。今春、けがでプレーができなかった川尻は、練習試合の球審を買って出た。「甲子園の景色を見るために、一瞬も無駄にしたくない」。球は受けられないが、一番近くで見ていたかった。そして、吉川を日本一の投手に-。川尻はこの日3安打3打点。だが、夢破れた。「またいつかバッテリーを組みたいです」。2人が甲子園で交わした344球。その1球1球の感触を、忘れることはないだろう。【木村有優】