
<全国高校野球選手権:横浜5-1綾羽>◇14日◇2回戦◇甲子園
横浜(神奈川)の織田翔希投手(2年)が本物の「怪物」になる夏がきた。初戦の完封勝利に続き、4回からリリーフでマウンドに上がり5回2/3を投げ3安打無失点。自己最速タイの152キロも記録し今大会2勝目。今春センバツと合わせて甲子園5勝目を挙げ、横浜で2年生までに甲子園で5勝した初めての投手になった。OBで「平成の怪物」と呼ばれた松坂大輔氏(44)からの格言を胸に、新たな歴史と伝統を築く。
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織田が甲子園の空気を変えた。1点ビハインドで迎えた4回、マウンドに上がり「流れを変えたかった」と、投じた1球目が自己最速タイの152キロを記録。140キロ台後半の力強い真っすぐを軸にスライダー、チェンジアップで緩急をつけ、テンポよく投げ込んだ。
「球速は意識していなかったんですが、流れを変えるという意味では、力がこもったのかもしれません」。5回には自らのバットで同点打をたたき出し投打で躍動。「無失点にこだわって投げられた」と5回2/3を投げ3安打無失点。チームの信頼を勝ち取った。
かつての「怪物」の言葉が、織田を変えた。春季関東大会後、OBの松坂氏がグラウンドを訪れた。「貫禄というか、オーラがあって。同じ人間なのに(笑い)。これが怪物か、すごい人だなーって思いました」。大先輩の姿に圧倒されながらも、悩みを打ち明けた。「甲子園のマウンドで堂々と投げるためのメンタル、マインドは何ですか?」。春季関東大会準決勝、専大松戸(千葉)戦で4番手でマウンドに上がるも勝ち越し打を許した。昨秋新チームの発足時からの連勝記録を27でストップさせた責任を背負い、もう1度、甲子園のマウンドに立つ自信を失っていた。
大先輩からの答えは「まわりから信頼される、認められる人間になることが大事。そして、自分に自信をもって視野を広く持つこと。だからこそ、マウンドに堂々と立てるんだよ」。
先輩の格言を甲子園のマウンドに生かした。ピンチの場面では内野に目を向け声をかけた。「2アウトだよ!」「ショートいくよ!」。チームメートも笑顔で応えてくれた。初戦後のキャッチボールで球の軌道を修正。自信をもってマウンドに上がり、チームの一体感にも手応えを感じた。
初戦の敦賀気比(福井)戦では村田浩明監督(39)が「松坂さんを何か一つ超えられるものを作ろう」と声をかけ、織田のためにチームが団結。堅守で横浜初の2年生投手完封を後押し。織田は記録を大きな自信に変え、この日のマウンドで躍動した。横浜の歴史と伝統を築く夏。「令和の怪物」と言われる日に、また近づいた。【保坂淑子】
◆2年生の球速 横浜・織田がセンバツの市和歌山戦に次いで152キロをマークした。夏の甲子園で2年生の152キロ以上は13年夏の安楽智大(済美)が三重戦で155キロ、昨年夏の石垣元気(健大高崎)が英明戦で球場表示153キロ(スカウトのスピードガンでは154キロ)を出したのに次いで3人目。春の2年生では13年安楽と今年の織田、菰田陽生(山梨学院)が152キロを出している。