
<高校野球愛媛大会:済美4-3松山商>◇29日◇決勝◇松山中央公園野球場
済美がタイブレークの熱戦を制し、18年以来7年ぶり7度目の優勝を果たした。
延長10回に2点リードを許したが、ナインはあきらめない。同点に追い付き、なおも2死一、二塁で牛草智裕外野手(3年)が右前タイムリー。劇的なサヨナラ勝ちに、田坂僚馬監督(38)はその場でうずくまった。「体の力が抜けてしまった」。喜びのあまり立ち上がれなかった。
指揮官は04年センバツ初出場初優勝メンバー。12年にコーチとして母校に戻ると、胆管がんでこの世を去った元監督・上甲正典氏と約2年半、指導者としてともに汗を流した。「自宅に飾る上甲さんの写真に、パワーをいただいています」。22年の監督就任後は、情熱的で、選手ファーストだった恩師の後を追った。
甲子園切符をもたらしたのは、就任翌年から入学した3年生たちだ。エース梅原朋貴投手(3年)は「“1期生”として甲子園に監督を連れていけるのはうれしい」と言う。今春、新田との県大会準決勝に最終回で逆転負けを喫した。これを境に、ナインは今夏の巻き返しへ力を合わせていった。田坂監督は「大会中、特別な指示はしていない。ある程度できる選手たち。最終的には安心できる」と自主自律を体現した選手との信頼関係を強調。「何よりも、選手たちに連れていってもらいました」と話した。
名将上甲監督の教えを受け継ぎ、令和の元号では甲子園初参戦の「SAIBI」が聖地で躍動する。【中島麗】
○…身長183センチ右腕の先発梅原は10回120球6安打3失点完投。「みんなで勝ち取った優勝」と謙虚に喜びをかみしめた。同校が前回出場した18年夏の甲子園。星稜戦(2回戦)での逆転サヨナラ満塁本塁打をきっかけに、滋賀・高島市出身の右腕は「済美高校は奇跡が起こる」と小学生ながら、早くも同校へ進学を志した。「この優勝は、奇跡ではなく必然。努力が自信になった」と仲間との最後の夏を甲子園で過ごす。