
<真夏のライラック:智弁学園(奈良) 近藤大輝(ひろき)外野手(3年)>
<高校野球奈良大会:天理3-2智弁学園>◇28日◇決勝◇さとやくスタジアム(県立橿原)
「打倒天理」を掲げた親子。父の雪辱を果たすことはできなかった。
91年夏の奈良大会決勝。三浦大輔(現DeNA監督)を擁して進撃した高田商の左翼が、大輝の父仁さん(50)だった。天理に2-3で惜敗し、甲子園の夢はかなわなかった。「天理を倒して父に甲子園の景色を」。息子が憧れたのは、智弁学園の赤いユニホームだった。
子どものころから、智弁学園と天理の試合があれば親子でスタンド観戦。自宅では智弁伝統の魔曲「ジョックロック」を流しながら練習に励んだ。智弁学園で過ごす最後の1年は、昨秋県準決勝で天理に敗れて始まった。親子で、チームで「打倒天理」を目指してきた。ノーシードで臨み、たどり着いた夏の決勝。リベンジを果たす絶好の機会が訪れた。
1点を追う9回無死一塁で打席が回った。応援歌は父との思い出が詰まった「ジョックロック」。だが二ゴロに倒れ、天を仰いだ。
試合後は「憧れのユニホームを着て、野球ができたことを誇りたい」と前を向いた。プロ野球選手というもう一つの目標へ。親子の新たな挑戦が始まる。【一 樹】