
<阪神7-1DeNA>◇27日◇甲子園
たくましく勝った! 阪神高橋遥人投手(29)が317日ぶりの復活勝利で後半戦2連勝スタートと今季最多の貯金20を導いた。左腕のプレート除去手術から再起した今季2度目の先発で6回途中1失点。たび重なる故障と手術を乗り越えた不死鳥左腕がローテに加わり、独走Vを加速させる勢いだ。DeNAの自力Vを消したチームはあす29日にも優勝マジック41が点灯。藤川阪神初、2年ぶりのV奪回へカウントダウンに入る。
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降板する高橋へ、甲子園全体から温かく大きな拍手が送られた。リリーフ陣のアシストを受け、6回途中1失点で317日ぶりの復活星。途中降板に少し悔しそうな表情を見せつつ、感謝の思いがあふれた。
「勝てたのは本当にうれしい。いろんな人の協力があってマウンドに立てているので」
再三走者を背負ったが、粘りに粘った。初回2死満塁のピンチは蝦名を二ゴロに仕留めて無失点。要所で踏ん張り、17のアウトのうち7つを三振で奪った。初失点した6回2死一、二塁で湯浅に託したが、堂々の93球で完全復活を印象づけた。
昨年11月、左腕に埋め込まれていたプレートを除去。「これは投げづらいだろうな…」。約8センチの金属片は、想像以上に大きかった。これが5度目の手術。ガチガチに包帯で巻かれた左腕は見慣れた姿だったが、心の内はこれまでの手術後とは少し違っていた。
「本当に最後だなと思ったから。うれしかった」
順風満帆とはいかない。今回は実戦復帰まで、想定より約2カ月多くの時間を要した。もどかしさも感じる日々。それでも、前進することはやめなかった。「いつか投げられると思ってやるしかないから」。
これまでも長いリハビリ期間を活用し、多角的に野球と向き合ってきた。ある時期はランニングフォームから走りを研究。今だからこそできることに取り組み、進化を目指してきた。今回も信念は変わらない。昨年12月ごろ、29歳で本格的に始めたのが「筋トレ」だ。
「体が大きい人には勝てないなとあらためて感じた。小学生と高校生で、球速が違うのはパワー。もっと速い球を投げたいと思ったら根拠のある体がないと」
以前はフォームへの影響などを恐れ「刺激を入れる」程度で、鍛えても下半身のみだった。根底にあったのは向上心と、たび重ねた故障と今度こそ決別するという覚悟だった。
「速い球を投げたいし、ケガにも強くなりたい。出力に耐えられる体じゃなきゃいけないから」
何度も立ち上がり、そのたびに強くなってきたプロ8年目。お立ち台では「今日よりしっかり投げられるように頑張ります」とすぐに次戦を見据えた。チームは貯金を今季最多の20に増やし、あす29日にも優勝マジックが点灯する。たくましさを増して帰ってきた背番号29が、独走態勢を加速させる。【波部俊之介】
▼阪神は29日にもマジック41が点灯する。M点灯の条件は、29日に阪神が広島戦に○のケースは中日が巨人戦に●か△、阪神が△の場合は中日が●。阪神が7月中にM点灯すれば03年(7月8日にM49)08年(7月22日にM46)に次いで2リーグ制後3度目になる。