
<高校野球神奈川大会:桐光学園5-1武相>◇18日◇4回戦◇サーティーフォー相模原球場
桐光学園(神奈川)が延長10回タイブレークの末、武相を破った。
勝利の瞬間、野呂雅之監督(64)は手を強く2、3度たたき、勢いよくベンチから出た。「役者にならないといけないことも、こういうゲームになるとね」と照れた。
とはいえ冷静なベテラン監督が、いつも以上に熱かった。一方で熟練の試合運びでもあった。
1点リードの7回。1死二塁から2死二塁になり、9番打者の八木隼俊投手(3年)を迎えた。
野呂監督はここでエースの加賀滉太投手(3年)を右翼に回し、鈴木陽仁投手(1年)をマウンドへ送った。理由は。
「意外と2アウトで9番って、ちょっとホッとするところなんですよ。前の打席でも三振取ったりしてるから、長い経験の中でストライク取りにいったところで(外野の前に)落とされたりを危惧したので」
続ける。
「八木君も好投手なので、失礼ですけど、技術以外のところが出るんじゃないかと。(鈴木は)左打者に対するアウトコースの制球力は抜群なので。レフトを(ライン寄りに)置いておけば、相模原球場はファウルグラウンドが広いので、打ち取れる可能性も高いので代えました」
今夏限りでの勇退を決めている知将ならではの、41年間も激戦区神奈川で戦ってきた経験のたまもの。
そして鈴木や小田倉優真内野手、峯岸鷹捕手ら1年生が、この緊迫した試合に臆することなく、ゲームの流れを生み出した。
「それはもう、上級生が甘やかすことじゃなく、練習の中から引き込んでくれたたまものっていうか。1年生が怖いもの知らずでイキイキと持ってるものを、切羽詰まってるゲームで恐れることなくプレーできるようにしてるのは、ベンチワークのたまものだと思いますね」
野呂監督が部員たちに寄り添ってきたからこそ、性格も熟知する。長年そうやって作ってきた桐光学園のカタチが、この夏も“いい感じ”になりつつある。【金子真仁】