
<高校野球西東京大会:杉並5-0桐朋>◇12日◇2回戦◇府中市民
昨夏と同じ舞台で屈辱を晴らせなかったが、海を渡った大先輩へ、成長と感謝を示す粘投だった。
米アスレチックス傘下のルーキーリーグでプレーする森井翔太郎投手兼内野手(18)の母校、桐朋は先発したエース左腕の金久保有杜投手(3年)が2度目のマウンドで意地を見せた。
昨夏と同じ府中市民球場での初戦。5点を追う5回の守備、左翼から再びマウンドに向かった。「『次も上がるんだ』って準備していた」。先発したものの3回4失点で降板。だが、2度目の登板は、まるで別人だった。「今日は伸びていた」という最速133キロの直球に変化球を織り交ぜ、テンポよく3者凡退に打ち取った。
6回無死からは直球、チェンジアップで2者連続三振。7回2死満塁のピンチは外角スライダーで中飛に打ち取り、左拳を掲げた。
身長は「森井先輩よりも大きい」185センチの長身左腕。メジャー挑戦中の森井とは、桐朋中からの仲だ。「中学はドッジボールをしたりして遊んだけど、一番は高校野球が濃かった」。
ブルペンでは、いつも右投げの森井と向き合った。のちに米球界に挑戦する先輩からは、股関節や肩甲骨の使い方を教えてもらい、渡米前には練習用の木製バットを譲ってもらった。
春の公式戦は背番号1を逃した金久保だが、大先輩の存在や悔しさをバネに厳しいトレーニングを重ねて球速は10キロ近くアップ。大会前にはインスタグラムで森井から「応援してるよ!」とメッセージも届いたという。「本当は見に来てほしかったんですけど、忙しいので。米国から応援してくれてすごくうれしかった」と喜ぶ一方で「本当は自分の投球で1勝をしたかった」と悔やむ。
今後は一般受験で東京6大学への進学を目指す。「みんなを驚かせるような、楽しませるような投手になりたい」。世界で戦う先輩のように。【泉光太郎】