
<高校野球東東京大会:芝浦工大付5-1日工大駒場>◇8日◇2回戦◇神宮球場
東東京大会で、理工系分野で名高い芝浦工大付が、2年連続で初戦を突破した。学業を通して得たデータ分析を活用しながら、部員15人の全員野球で3回戦へ進出。京都では、同志社国際のプロも注目するフォーク黒田レイモンド豪内野手(3年)が、初戦で姿を消した。
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部員15人と少数精鋭の理系軍団が“考える全員野球”で勝利をもぎ取った。中盤まで競り合い、終盤にはアクシデントも襲ったが、芝浦工大付のエースで4番・村上慶多投手(3年)の心は折れなかった。左サイドから、左上からと、リリース位置を変えることで打者に的を絞らせず、116球で1失点完投。「今日はいっぱい野手に助けてもらった」と仲間に感謝した。
理系大付属の中高一貫校。「科学技術に対する興味関心、理系の思考力の育成」を教育方針に掲げる。工業系で、ものづくりの授業がある。ラジオやロボットなどを製作する過程で、自ら考える習慣が身についた。「発想力がつきました」。物理学を活用してリリースの角度に着目したことで、独特の投法が生まれた。7回の攻撃中、投手強襲の内野安打を放ち一塁にヘッドスライディングした際、両脚のふくらはぎをつって1度はベンチへさがったが「投手は自分しかいない」と、覚悟決めて再びマウンドに立った。
“考える”のは、選手だけじゃない。背番号15でベンチ入りした田村孝陽マネジャー(3年)は「MLBが好きでデータを活用し勝利に貢献したい」と野球部に入部した。過去の試合記録から、打球方向の割合や状況別のストライク率を専用アプリなどを使って収集。理工系だけに、数字の扱いはお手の物。多くのデータを選手に提示して、課題克服をサポートしてきた。練習メニューも選手主体で考えている。
エースが完投し、打線は2桁安打で2年連続の初戦突破。古川誠監督(48)は「彼らも楽しいんじゃないかな」と、勝利のために工夫を凝らす選手たちに感心する。自ら考え、発想を実現する野球で、この夏を戦い抜く。【北村健龍】
◆芝浦工大付 1922年(大11)東京鐵道中として創設。53年(昭28)に現校名に。82年(昭57)に中高一貫校へ。生徒数は約650人。科学、技術、工学、芸術、数学を総合的に学ぶSTEAM教育を実践。また「ものづくり工学講座」としてロボット、生命工学など大学の先取り授業を展開する。所在地は東京都江東区豊洲6の2の7。柴田邦夫校長。