
<日本生命セ・パ交流戦:オリックス8-3巨人>◇15日◇京セラドーム大阪
巨人戦6連勝のヒーローになったオリックス森友哉捕手(29)は、お立ち台で涙があふれた。「今日始球式で、大翔(ひろと)が投げたんですけど…」と声を震わせ、目頭を押さえた。「僕たちがシーズン最後まで負けない気持ちで頑張ります。大翔も頑張ってください」。熱い思いがこみ上げ、親友の名前を叫んだ。
「大阪代表バファローズ高校(3年連続4回目)」イベントの最終日。母校、大阪桐蔭の吹奏楽部が右翼5階席から甲子園でおなじみの応援メドレーを奏でた5回、0行進の打線が目覚めた。1点ビハインドを追いつき、なお1死一、三塁。森が巨人戸郷の3ボールからの4球目、外角直球を右前にはじき返した。1イニング6安打5得点を導く勝ち越し打で拳を握った。
「今日は絶対に、自分がお立ち台に立つと強い気持ちで臨みました」
何としても打ちたい理由があった。試合前の特別始球式。大阪桐蔭野球部の同期でステージ4の希少がんを患う福森大翔さん(29)がマウンドに上がった。13年春夏の甲子園に一緒に出場し、ともに16強入りした外野手。2週間前は病気の影響で3メートルほどしか投げられなかったが、力強く18メートル先の森のミットに収まると2人は抱き合った。「自分の打てないとか、どこか痛いとかは大翔に比べたら屁(へ)でもない」。この日は少しでも元気づけたいと、登場曲をゆずの「栄光の架橋」とドリカムの「何度でも」に変更。「一日、大翔のこと考えるだけでずっと泣きそうやった」。大翔さんにもらったパワーをバットにぶつけ、マルチ安打も決めた。
主催試合では実数発表となった05年以降最多の3万6219人の観衆を集めた一戦で、今季3度目の同一カード3連勝。首位日本ハムをピタリ2・5差で追う。森はこれからも快音で友にエールを送り続ける。決意を新たにする1日になった。【村松万里子】