
NHKは8日、3日に89歳で死去した巨人長嶋茂雄終身名誉監督の生涯を振り返ったNHKスペシャル「さよならミスタープロ野球」を放送した。
「ON砲」として巨人黄金期を築いた盟友のソフトバンク王貞治球団会長(85)、元巨人でヤンキースGM付特別アドバイザーの愛弟子松井秀喜氏(50)など関係者の証言がVTRで紹介された。
長嶋さんは東京6大学の立大時代から58年に巨人へ入団。ルーキーイヤーから本塁打王と打点王の2冠を獲得し「天才」と称された。
入団2年目の59年。昭和天皇がプロ野球を初めて観戦した阪神との天覧試合でもスターぶりを見せつけた。4-4の9回先頭で打席に立ち、5球目を捉えて左越えのサヨナラアーチで試合を決めた。長嶋さんが活躍したのはテレビが急速に茶の間に普及した高度経済成長期。野球が国民の娯楽となり、その申し子となった。ヒゲを剃るだけ、焼きそばを食べるだけでもニュースとなった。
本人主演の映画「ミスタージャイアンツ勝利の旗」が制作されるなどますます人気は過熱していった。
長嶋氏が国民的スターとなった理由には「華がある」ことも大きかった。「とにかくファンに対して 良い感じを見せることが 自分には非常に強くありましたね」と自身のモットーがあった。結果だけを追求せず、エンターテインメントとしての野球を全うすることが信条だった。
豪快にヘルメットを飛ばしながら、空振りを喫する当時のモノクロ写真が紹介された。ヘルメットが大きく飛んでしまう理由には、打てなくてもファンに楽しんでもらおうと、大きいサイズのものを被っていたからという。
敬遠の際にはバットを持たずに打席に入ることで、抗議の意思を示すパフォーマンスを行った。守備では歌舞伎の所作を意識した三塁守備のフィールディングを見せるなど、野球の常識を少しずつ変えていった。
敬遠球を強振し、泥だらけになりながら本塁へ突っ込んでランニングホームランを決めたこともあった。王氏が頭部死球を受けた試合では、直後に怒りの本塁打を放ってチームを救うなど、豪快なプレーで次々とファンを魅了していった。