
<日本生命セ・パ交流戦:ヤクルト4-2ソフトバンク>◇8日◇神宮
ヤクルト伊藤琉偉内野手(22)が“どん底力”を発揮した。5回1死二塁、ソフトバンク松本晴から3号2ランを放った。スライダーを左翼席最前列に運ぶと、控えめに拳を握った。2戦連発、直近4戦では3発に「本当に自分でもびっくり。ただもったいない打席も多いので、そこをもっとしっかりできるように」と喜びつつ2三振の反省も忘れなかった。
BC新潟(現オイシックス)から23年ドラフト5位の2年目。取得単位が足りずに大学中退後、地元・群馬の居酒屋でアルバイトを経験した。消えかけていた野球の思いが、兄から草野球に誘われたことも契機に再燃。独立リーグからNPBの扉を切り開いた。
はい上がってきたエネルギーに満ちる。「こんなにお客さんが入ってる中でプレーできるのは本当に幸せ。こういう雰囲気はプロ野球でしか味わえない。自分の立場は結果を残すしかない」と言う。堅実な守備が持ち味だが「強く振る」と意識し、打力向上に取り組んできた。4月20日巨人戦ではサヨナラ打をマーク。プロ初本塁打だった6月5日西武戦から、もう3号。急成長を遂げている。
まだチームは借金17を抱える。逆境を知る男が燕を8カードぶりの勝ち越しに導いた。【上田悠太】