
春の日本一を決める戦いが幕を開ける。第74回全日本大学野球選手権大会(9日開幕、神宮ほか)を前に、東北6県版では東北地区の出場校を全3回にわたり紹介する。第1回は3年ぶり37度目出場の東北福祉大(仙台6大学)。ライバル仙台大との優勝争いを制し、全勝で3季ぶり77度目のリーグ制覇を成し遂げた。プロ注目の最速151キロ右腕、エース桜井頼之介投手(4年=聖カタリナ)が全国屈指の投手陣をけん引する。
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思わず涙があふれた。エース桜井は、ようやく優勝の景色にたどりついた。優勝を争っていた仙台大との第1戦に先発し、4安打8奪三振で完封。ライバル相手に初めて勝利を挙げた。
この一戦にかける思いは人一倍だった。「自分が投げて負け続けてきたので」。2年春から主戦を担ってきたが、ライバル仙台大との大一番は、昨秋までの5戦で15失点。「日本一」どころか、全国出場からも遠ざかっていた。
「本当に悔しいという感情しかなくて」と、もどかしい思いをずっと抱えていた。普段はおとなしく、ポーカーフェースの桜井だが、この日は違った。何度もほえ、感情むき出しだった。翌日の優勝時には、これまでの思いがうれし涙となって流れた。
周りにとらわれない“桜井スタイル″が最大の武器だ。180センチ越えの大型投手が多い中で、174センチ、66キロと小柄なエース。それでも「コンプレックスに感じたことは1度もありません」ときっぱり。さらに、これまで参考にしてきた投手はいない。「自分の感覚を大事にしているので、他の投手をまねすると逆に変わってしまいそうなので」と自分を貫く。
「桜井を日本一のピッチャーにしよう」。これがチームが描く物語だ。桜井は「素直にうれしいです。『自分も頑張らないと』という気持ちにさせてくれます」と照れ笑い。高3のセンバツ以来の全国大会。「まずは勝つことが1番です。良い形で後ろにつなげるように、自分が投げている時はゼロに抑えたいです」と意気込んだ。18年以来、7年ぶりの全国制覇に向けて、シナリオはすでに完成している。【木村有優】
◆桜井頼之介(さくらい・よりのすけ)2003年(平15)7月21日生まれ、兵庫県尼崎市出身。小1から難波ホークスで野球を始め、中学では尼崎ボーイズでプレー。聖カタリナでは1年秋からベンチ入り。3年時にはエースとして、同校初の甲子園となる春のセンバツに出場。東北福祉大では1年秋にベンチ入り。今春はMVPを獲得。174センチ、66キロ。右投げ右打ち。