
<西武1-0ヤクルト>◇3日◇ベルーナドーム
後輩たちの前で、ある意味「らしい」咲き方だったのかもしれない。
西武の西川愛也外野手(25)は5打数無安打だった。「力まないようにした…つもりですけどね」と試合後は苦笑いが浮かぶ。
「でも、打てなくて残念ですけど、しっかりパワー、もらいました」
64人からなる母校の花咲徳栄(埼玉)吹奏楽部が、左翼席の応援に参加する1日。昨季も同様の応援企画はあったものの、西川は試合に出られなかった。
「僕が成績残してないのが悪いんで、もっと頑張ります」
自分にダメ出しすることで悔しさを閉じ込めた。
努力し、ようやくつかんだ1番打者の座。ようやく後輩たちに“愛也さん”の躍動を見せられる。
吹奏楽部だけじゃない。内野席には硬式野球部90人、女子野球部31人、ソフトボール部23人がやって来て、先輩に声援を送った。
西川は「力まないようにした」と話したが、西口文也監督(52)には「ちょっと力が入りすぎたんじゃないでしょうかね」と見えていたようだ。
先制点を阻止する中堅からのバックホームに、後輩たちはこぶしを突き上げた。イケメンで走攻守そろい、華やかな選手に見える。でも恩師の岩井隆監督(55)が見る本質は違う。
「本当は静かなタイプ。ヒーローインタビューとか聞いても、あんまりワーッてやらないよね。そういう子ですよ。目立たないように目立たないように」
17年の甲子園初優勝の主力の1人でもある。一躍、人気者になった。
「でも、学校でもヒーローだったけど、ずっと低姿勢で静かな子でしたよ」
ケガをしても中学時代からずっと注目していた恩師には、そう映る。
花咲徳栄。その名の通り、学校には多くの花が咲く。岩井監督も花にはけっこう詳しい。
それでは西川愛也を花にたとえると-。
「うーん…かすみ草」
師は迷わずに言った。5年前、同じ質問をした時に西川の1つ後輩である日本ハム野村のことは「梅」と表現していた。でも西川はかすみ草。
「西川はみんなを引き立てる子。そのために頑張れる、そういうやつ。彼はヒマワリじゃない。明るい花じゃない。どっちかというと引き立て役。だから、かすみ草」
最終回、バントを2つ失敗し、最後は先っぽに当て、変な回転の三塁ゴロ。でも進塁打になって、間違いなく直後のサヨナラ勝利につながった。
だから今夜もかすみ草。「しっかり、明日あさってで取り返せるように頑張ります」。花言葉は感謝、清らかな心、無邪気-。悔しさもそこに隠して、ライオンズを引き立てる。【金子真仁】