
西武は3日、佐々木健投手(29)と支配下選手契約を締結したと発表した。
23年11月、佐々木は頼んでもいないのに左袖をまくってくれた。
「こんな感じです」
はっきりとした手術痕。同年8月、左肘のトミー・ジョン手術を受けた。
人生初の手術。「麻酔、超きつかったです。僕の場合は熱が出て、38度から下がらなくて、もうケータイも触りたくないくらい」。翌朝になってようやく熱が下がってきたという。
防御率0点台と好投していたのに、肘が痛み出した。プロ3年目、立場を確立したい時期。でも佐々木は手術を選んだ。
「僕の中でごまかしながら野球やるっていうのはなかったので。長く野球やりたいですし、そのために1回踏み切るっていうのにちゅうちょはなかったです」
熱も出たし、麻酔が切れたら痛かったし、でも3カ月後には右腕と同じ可動域まで戻ってきた。
「来年はリハビリ組でこんがり日焼けします」
言葉通りの春夏秋冬を過ごし、いよいよ復帰イヤー。春野キャンプでのライブBPを一度回避するなどで少々出遅れたものの、ようやくここまで来た。
2軍で4試合、5試合と1イニング登板を重ねていく。連投もあった。
1軍はリリーフ左腕が必要な状況にある。間違いなく需要が高まる。
1軍戦取材のベルーナドームを抜け出し、1度2度と2軍戦のカーミニークフィールドへ駆けつけた。
佐々木の生登板を見ることはできなかった。
「今はこの日に投げる、って感じではやっていないんですよ。1軍みたいに『(試合)展開で行くぞ』と。その中で結果的にいいペースで投げられてますし、連投や回またぎもしながら、1軍に呼んでいただいた時へのいい練習になってます」
だからなかなかマウンド姿に遭遇できない。ブルペンでの姿ばかり見た。投球練習ではなく他のリリーフ陣と待機する姿ばかり。
もともと“好青年”と呼ぶにふさわしい人柄だったように感じていた。
手術とリハビリの苦しい時期を経て、ますます大きくなったように見える。
佐々木は、責任回数を投げ終えてブルペンへ戻る先発投手を最前線で笑顔で出迎え、マウンドへ向かうリリーフ投手を気持ちをほぐしながら送り出す。
29歳、良き兄貴分。いい雰囲気の中でしっかり結果を出している1軍リリーフ陣の輪に、そんな献身的な佐々木の姿を重ねてみる-。とても、しっくりくる。【金子真仁】