
2025年の日本生命セ・パ交流戦は、今年で節目となる20回目(21年は新型コロナの影響で中止)を迎える。プロ野球を30年以上取材してきたベテラン小島信行記者が、ここまでのセ・パの戦いぶりをトータルし、データを算出。〝パ・リーグ圧勝時代〟が終わり、今後はどう変わっていくのか? 今年はどういう戦いになるのか? 徹底分析した。
◇ ◇ ◇
ここまでのセ・リーグとパ・リーグの戦績は、セの1174勝に対しパが1310勝と圧勝している。しかし、2020年に新型コロナの影響で交流戦が中止となり、再開した21年から流れが変わっている。
19年までの15大会で、1度しか勝ち越していなかったセが再開後には2度も勝ち越し。直近4年間の対戦成績でも、208勝208敗16分けの〝がっぷり四つ〟の戦いになった。
逆襲のセの要因は、DeNAの躍進が挙げられる。19年までの平均順位は8・87位だったが、21年からは3・25位に急上昇。総合の平均順位で断トツのソフトバンク(3・31位)に次ぐ順位になっている。23年には初優勝を果たし、総合順位でも広島を抜いて最下位を脱出した。
パのチームで変貌したのは楽天だろう。交流戦の勝敗は204勝217敗5分けで全体の9位。まだパの中では最下位だが、球団創立は交流戦の始まった初年度で、未熟なチームだった。そこから昨年、悲願の初優勝を果たすなど、19年以降は勝率5割を切ったことはない。これはDeNAと同年数でトップになっている。
序盤戦は苦しい戦いが続いていたDeNAはチーム状態が良くなり、交流戦前までに2位に上がっている。交流戦の苦手意識を払拭し、得意にしてきているだけに首位の阪神を脅かすチームの1番手に挙げられる。逆に楽天は下降気味でBクラス。得意になった交流戦での巻き返しが期待される。
一方で心配なのがセでは広島、パでは西武だろう。広島は交流戦の通算勝率が12球団で最下位。西武は2年連続で最下位になっている。
交流戦は直接、同一リーグのチームと対戦がないため、大敗するとペナントの順位が大きく下がる傾向が強い。特に12球団の勝率がトップのソフトバンク、同2位のロッテが下位にいるだけに、同7位で勝率4割8分9厘の西武は油断が禁物だろう。
ここで少し趣向を変えて、DH制の有無でセとパでどちらが有利かを検証してみよう。
まず、DHで起用された打者の打率は、セが2割4分1厘でパが2割4分9厘。打率にすると8厘しか違わないが、OPSだとセが.691でパが.755と差が開いている。
簡単に紹介すると、日本球界全体でのOPSの平均は.600の後半になる。守る必要がない打撃専門の打者として、寂しい数字といえるだろう。一方、パは長距離砲がうまく機能している。
投手の打率とOPSを見ると、セが打率1割2厘でOPSが.244。パが打率9分2厘でOPSが.231。犠打数はセが279個で、パが226個。セの投手がリードしているが、DHで出場する打者ほどの差はない。
先発投手の平均投球回数を比べると、DH制ありでセが5・89イニングでパが6・25イニング。DH制なしだとセが5・80イニングでパが5・63イニング。1アウトぐらいの違いで、それほど大きな差はないが、特徴的なのはパがDH制ありで投球回数が1番なのに対し、DH制なしだと最少イニングになるところ。セが0・09イニングしか差がないのに対し、パは0・62イニングほどあり、約2アウト分ほどの差が出ている。これは、パがDH制の有無によって継投策や代打策のメリハリをつけた試合運びができているとも言える。
個人的な感想だが、セはDH制の時に守備力を重視してスタメンを決める傾向が強く、パはDH制がない試合でも守備力に目をつぶって、スタメン出場させる傾向があると思う。
統計のデータ量が多く、ここでは紹介できないが、試合での勝敗は、野手の守備力より、攻撃力の方が影響力が強い。チーム編成が違うため仕方のない部分もあるが、これがセとパの勝敗に表れているのだと思う。
交流戦はこうしたデータと照らし合わせて試合観戦すると、面白みが増すのではないだろうか? 今年はどんなチームが躍進し、誰が活躍するか? 白熱した戦いを期待したい。
★交流戦アラカルト★
◆昨年は1勝差でパが勝ち越し 過去19度の交流戦で、パ・リーグが16度勝ち越し。21、22年はセが初めて2年連続で勝ち越したが、23年は2勝差、24年は1勝差でパが勝ち越した。
◆Vは8球団 昨年は楽天が初制覇。05年から始まった交流戦で優勝経験があるのは8球団。残る優勝未経験は西武、阪神、広島、中日。
◆ソフトバンクが断トツ勝率 最多8度の優勝を誇るソフトバンクは通算勝率も6割1分5厘でトップ。12球団の中で1チームだけ勝率6割を上回る。
◆おかわり独走 最多本塁打は中村(西武)の80本で、214打点とともにトップ。2位は阿部(巨人)の60本、ラミレス(DeNA)の183打点で、この2部門では独走状態にある。安打数は現役の栗山(西武)が337本で1位。現役2位は坂本(巨人)の327本。
◆最多勝は石川 石川(ヤクルト)が通算29勝で単独トップ。史上初の30勝へ王手をかけている。現役2位の涌井(中日)は26勝。両投手とも交流戦開始の05年から投げている。
◆意外性のMVP 昨年は水谷(日本ハム)がMVP。23年オフに現役ドラフトでソフトバンクから移籍し、前年まで1軍出場なしの男が交流戦史上最高打率の4割3分8厘(64打数28安打)をマークした。
◆球界再編で実現 交流戦導入については90年代からパ球団が希望し、セ側が反対する構図が続いた。巨人戦の放映権料を巡る綱引きだった。04年に近鉄とオリックスが球団統合する「球界再編騒動」を契機に、各球団の経営問題が表面化。1リーグ制移行へのもくろみや、選手会による球界初のストライキも起きる大混乱の中で、両リーグが歩み寄って実現した。
◆試合数は半減 初年度の05年から2年間は、各カードが3連戦のホーム&ビジターで6試合ずつ行う計36試合制。07年からはポストシーズンゲーム(現クライマックスシリーズ)の導入に際して再検討され、2連戦のホーム&ビジターで24試合制に。15年からは各カード3連戦の18試合制になり、ホーム&ビジターを隔年で入れ替えて開催。