
<高校野球春季近畿大会:東洋大姫路1-0奈良大付>◇31日◇準決勝◇さとやくスタジアム
東洋大姫路(兵庫)の1番打者・渡辺拓雲内野手(3年)は意外にも「長打」を意識していた。
0-0の3回先頭。カウントは1-1。内角低めに来た直球を思い切りすくい上げると、打球は右翼ポール際のフェンスを越えた。入学直後に練習試合で打って以来、約2年ぶりの高校通算「2号」だった。
初戦で好投手擁する大阪桐蔭に9-2とコールド勝ちした強力打線。しかし渡辺拓は打線に“悪癖”があると見ている。「1人が打てないと、みんなが打てなくなる」。負の連鎖もまた起こりやすいという。
まさにその気配があった。初回の先頭、内野安打で出塁した。1死二、三塁とチャンスを広げたが、中軸が続けざまに倒れていた。流れの悪さを感じ、3回の打席には責任感を持って立った。「流れを呼ぼうと思った。(球種やコースを)張れる球は張って、長打を打てたらいいと思っていた」。出塁するだけではなく、チームを勢いづける打撃を心がけた。その結果が最高の形になった。
ただ、その後の無死二塁で走者を進められず無得点。結局は渡辺拓が打った1点しか取れず、投手陣に頼る試合になった。
「秋とは比べてものにならないほど相手のレベルが上がっている。自分たちはチャレンジャー。夏も今日みたいな試合が増えると思う。理想は1番から9番まで全員が出塁して、全員がかえせる打線です」
2季連続の近畿大会決勝を決めても、危機感を高めたような口ぶりだった。【柏原誠】