
<西武1-3楽天>◇27日◇上毛新聞敷島
帰路につく西武高橋光成投手(28)を、1000人近い“同志”が待っていた。「光成くーん!!」「光成さーん!!」。サインくださ~いの輪じゃない。よくやった!! の輪。勝てなかった。でも、群馬で投げた。見せた。「群馬での登板、地元での登板というのはすごく特別なので」。歓声の中を英雄のように帰った。
7回1失点も自責点はなし。7回のピンチは空振り三振でほえた。「ああいう粘りもすごく次につながると思います」。年に一度あるかないかの地元開催。強烈な声援を後押しに121球を投げた。「群馬でずっと試合をできるわけではないので、かみしめながら勝利を届けたい」との思いを存分に投球で表現した。
前橋市より海抜で600メートルも高い沼田市利根町で生まれ育った。小学校は1学年1クラス。男子8人だけのクラス。今でも当時の全校児童をほぼフルネームで言える。「カモシカ、タヌキ、キツネ…30匹くらいのサルの集団とかもいます」。前日26日朝には、町の入り口に子グマが出現した。尾瀬のふもとの山里で、すこやかに育った。
前橋育英時代に甲子園を制し、帰省すると大フィーバーに。その時に抱っこした、2歳で知人の息子の「ぶんた君」が今は中学生になり、6月1日に同じ利根中野球部員として実戦デビューする。故郷の多くの子どもたちも目に焼き付けた、背番号13の勇姿。「いなかからでもプロになれるよ、って見せられたかな」。勝って首位浮上はならなかったけれど、花火よりも光り輝いた上州の夜だった。【金子真仁】