
<ソフトバンク1-3西武>◇14日◇みずほペイペイドーム
西武ドラフト2位ルーキーの渡部聖弥外野手(22)がプロ108打席目でうれしい初本塁打をかっ飛ばした。
初回、ソフトバンク大津の低め直球を見事に左翼席へ運んだ。故障で一時離脱していた強打者は、この日で規定打席にも復活し、打率3割3分3厘でいきなり2位にランクイン。昨秋ドラフトでは12球団で13番目に名前を呼ばれた“超ドラ2”の活躍で、昨季91敗の西武が20勝にリーグで2番乗りを果たした。
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初本塁打の感想を問われたルーキーの横に、西口監督がヌッと登場した。「初ホームラン出てホッとしてます」という指揮官による代弁に、渡部聖は「ありがとうございます」と白い歯を見せた。「正直、そろそろホームラン打ちたいとは思ってました」。大商大時代に「ムキムキマン」と呼ばれた強打者が、煩悩を消してチーム打撃に徹し、ようやく108打席目に1号だ。
初回2死、ソフトバンク大津の低め直球にヘッドをうまく返すと、打球は低弾道のまま左翼席へ吸い込まれた。打撃練習では左翼席上段に運びながら、試合では「基本はセンターへ」。初アーチに時間はかかったが、初見のプロ投手に次々と対応してきた打撃技術はやはり抜けた存在だ。
広島・府中市出身。スーパー小学生ではなかった。「小学3年で試合に出始めたんですけど、当時はまだ体が小さくて2番とか打ってて。バントから始めたんです。ずっとバント職人って言われてたんです」。でもやっぱり、思い切りバットを振れるようになればうれしい。走るのは嫌いでも、時間を忘れるほどバットを振っていた。
恩師が府中から駆けつけた大阪での前夜は、打てなかった。この日、山陽新幹線で福岡へ移動。2時間少々の旅路でやっぱり故郷は気になる。「カープの球場がちょっと懐かしくて」。広島駅到着のアナウンスが流れるとブラインドを上げ、車窓から景色に浸った。
右足首の捻挫で戦列を離れた時期もあったが、この日で再び規定打席に復活した。いきなりパ・リーグ2位にランクイン。「ここからが長いので。今の打席の数字で評価されるわけではないと思うので」と浮つくこともない。昨秋のドラフト会議。1位指名では縁がなかったけれど、奇跡的に2位で残っていた。広池球団本部長は「聖弥で満場一致でした」と明かす。半年後、いまや欠かせない3番打者になった。【金子真仁】