
<巨人1-10阪神>◇5日◇東京ドーム
黒星にも光が見えた。1軍復帰登板の巨人戸郷翔征投手(25)は6回5安打3失点(自責2)で3連敗。またも白星ならずも「(手応えは)だいぶあった。新たなスタートが切れた」と視線を上げた。
初球から直球を4球続けた。「データより自分のことを最優先に。そんなに腕も体も振らなかった。その中であの球速が出た」と初球の151キロで阪神近本を遊ゴロに仕留め、2軍で取り組んできた「真っすぐの質」を証明する投球が続いた。
開幕戦から3試合で0勝2敗、防御率11・12。4月11日の広島戦(マツダ)では4回途中、自己ワースト10失点で降板し、再調整となった。野球人生最大の挫折にもがいた。1つの答えは25日の2軍戦後。「球が強ければ145キロでも抑えられる」。球速を追い求めすぎた気負いに思い当たった。「球速を出しにいって体を振ることが一番駄目」と力みを消した。
速さを求めて狂った感触。追わない持ち味を意識すると、150キロ以上の「真っすぐ」が次々に決まった。4回には森下に直球を左翼席に運ばれ、6回には4安打で勝ち越し点を許した。「チームを勝たせられなかった」とエースの責務を直視しながら、「新しい出力の出し方ができた。次の試合が楽しみ」とも。不振を超えて刻んだ82球が、未来を照らす。【阿部健吾】