
西武山野辺翔内野手(30)がヤクルトに移籍することが1日、両球団から発表された。金銭トレードとなる。
“源田たまらん”と称される遊撃守備の名手、源田壮亮内野手(32)に尋ねたことがある。
「西武のチームメートで、まだあまり知られていないけれど“たまらん”と思う隠れた技術を持つ選手は誰ですか?」
源田は「え~っ? 誰だろう。うーん、うーん」と10秒少々頭を巡らせた末に「!」の吹き出しが浮かぶような表情になって答えを出した。
「山野辺!」
うれしそうに続けた。
「ランナー出た時、山野辺の帰塁はすごいっすよ。本当にうまい。もっと盗塁に生かせればなおいいですけどね。僕の帰塁なんかより全然うまい。ぜひ注目してみてください」
ひらめきがうれしかったのだろうか、その数日後に山野辺は「今日、源さんにそれ、言われました」と笑っていた。プロになってから「小関コーチや佐藤友亮コーチに仕込まれましたね」とのことだ。
社会人出身だが雑草魂。桐蔭学園(神奈川)時代、3年夏の神奈川大会決勝で桐光学園・松井裕樹投手(現パドレス)から左中間二塁打を打った。でも背番号は2ケタ。「大会前のメンバー発表の時も呼ばれるかドキドキしたくらいです」と懐かしむ。
桜美林大でも全国に名だたるような強さはなかった。「でも、必ずしも強豪大学に行かなくても、自分がしっかりやれば全然レベルが上げられると思うので」。懸命に練習し、一目される選手になった。20年10月、久しぶりの優勝に近づいていたロッテの勢いを止めたのは、攻守にわたる山野辺の活躍だった。
おとなしめな選手も多い西武の、貴重なムードメーカーでもあった。ウオーミングアップのランメニューは、3人ずつ並んで走る。先頭は若手。山野辺はあえて最後方に陣取った。外国人やベテランたちとともに「さぁ、行きましょう!!」と声を張る。そうやってチームを包んできた。
新天地でもたまらん技術で、たまらん存在に。【西武担当=金子真仁】