
<ヤクルト5-4広島>◇2日◇神宮
ヤクルトが執念の同点劇からの劇的サヨナラで今季初勝利を挙げた。
8回に3点差を追いつき、延長10回1死一、二塁から丸山和郁外野手(25)がサヨナラ打を決めた。今年2月に当時の代表取締役会長CEOオーナー代行・衣笠剛さん(享年76)、球団マスコット「つば九郎」の担当者が相次いで死去。弔い、感謝を示す特別なシーズンのスタートを切った。2年連続5位から最高の恩返しとなる優勝へ。本拠地開幕戦でまずは1勝目を手にした。
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「みんなえみふる」な劇的勝利だった。高津監督が白い歯をむき出しにして、一塁側ベンチから飛び出した。延長10回裏1死一、二塁。丸山が一、二塁間を破った。二走・並木がヘッドスライディングで生還。3時間49分の激闘に決着がついた。開幕からの連敗は3でストップ。高津監督は「4戦目にして1つ勝てた。今日のゲームも苦しかったけど、よく粘った。面白い、勝つゲームをお見せできたのかな」と胸を張った。選手もスタッフも、みんな笑っていた。
この日もベンチの前列端に「つば九郎」ぬいぐるみが座っていた。ただのぬいぐるみではない。2月に死去した同担当者の私物。5回終了後の「つば九郎」のイベント「空中くるりんぱ」を行う際に一緒に置き、大切にしていた相棒だ。
3月上旬、球団スタッフが「つば九郎」の控室にしまわれていた、その“宝物”を見つけた。3月14日のオリックスとのオープン戦からベンチで試合を見守っている。本拠地初の公式戦。5回終了時の「空中くるりんぱ」も、試合前の「フリップ芸」もない。勝利の出迎えにも姿はない。それでも一緒に戦っている。
高津監督は同担当者の訃報後、手紙をしたためた。「誰よりもスワローズを愛し、選手へのリスペクトを忘れず、チームやファンを元気にしてくれたあなたに心から感謝しています。おい、つば九郎! 飲みに行くぞ!」。21年日本一になった時、つば九郎は変わらぬ表情の裏で号泣していた。毒舌、ユーモアの中に野球への愛が満ちていることを皆、よく知っている。
弔い、感謝を示すシーズンを戦う。チームの再建を支えた当時の代表取締役会長CEOオーナー代行、衣笠氏もキャンプ中に亡くなった。スワローズを愛し、人生をささげていた2人だった。
高津監督は言う。
「(つば九郎が)いつもいる位置にいなかったり、会長がゲーム前に顔を出して『頑張れよ』って言ってくれる。それがないと、いつもと違う感じはします。ただ、それぞれ胸に秘めて、頭に思い出しながら、頑張っていくしかない」
つば九郎は「笑顔がいっぱい」を意味する「みんなえみふる(笑みフル)」を愛用していた。衣笠さんは「(優勝旅行で)ハワイに連れて行ってくれ」と何度も激励していた。勝利を重ね、みんなで笑い合う。その姿が最高の恩返しになっていく。【上田悠太】