
<西武2-3日本ハム>◇29日◇ベルーナドーム
日本ハムが延長戦を制し、新庄政権初の開幕2連勝を飾った。終盤に追いつかれる展開となったが、8回のピンチでは投手交代時に自らマウンドへ。清宮幸にカイロを渡し、内野陣全体には“魔法の言葉”をかけて相手に傾きかけた流れを断ち切った。延長10回に上川畑が決勝打を放ち、球団では13年ぶりに開幕から引き分けなしの連勝。30日は東映時代の62年以来、63年ぶりとなる“開幕ストレート3連勝”に挑む。
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新庄剛志監督はユーモアたっぷりに振り返った。「やっぱプロ野球はエンターテインメントなんですけど、最後の焦らせる捕り方…あそこまで魅せなくていいかな(笑い)」。1点リードの延長10回2死。セデーニョが放ったマウンド付近の飛球を、三塁の清宮幸がギリギリのタイミングでキャッチ。「デーゲームは難しいんすよ、屋根が」と打球が見えづらいこともフォローとして加えたが、とにかく接戦を制して就任4年目で初の開幕2連勝。笑顔だ。
勝負どころで動いた。同点とされた直後の8回2死一、二塁。新庄監督は何かを手に持ってベンチを飛び出した。球審に投手交代を告げ、そのままマウンドへ。まずは右手に持った何かを清宮幸へ差し出した。「ホッカイロを渡しに行った」。気温5度前後と寒かった試合。6回に悪送球で失策を記録し、盛んに右手を息で温めていた清宮幸にホットアイテムを手渡した。
ナインの心を、ホッとさせていた。「僅差の時ほど自分のところにボールが飛んで来いっていう意識を持ちなさい」。内野陣に攻めの姿勢を持たせると同時に「俺も試合に出てえよ」と語りかけると、選手たちは笑みを浮かべた。
今季は審判団からの強い要望もあり、投手交代時に監督が自らマウンドに行くことになった。そんな義務的な部分も大事なポイントに変えてしまうのが“新庄トリック”。選手たちが踏ん張って8回のピンチを乗り越えると、最後は勝利の女神もほほえんでくれた。
球団にとっても開幕2連勝は引き分けを挟んでいた19年以来6年ぶり。ストレートの2連勝は12年以来だ。さらに開幕3連勝は引き分けを挟んでいた80年以来45年ぶり。引き分けを挟まない“開幕ストレート3連勝”は前身の東映時代となる62年を最後に遠ざかる。
開幕戦勝利後に「あと2つ、取りに行きます」と話していた新庄監督は、あと1つどころか「もちろん、それは143勝したいですよね…このペースなら、まだあり得るから」とニヤリ。開幕3戦目も難敵右腕、高橋が先発だ。「ちょっと部屋に帰ってメロンパン食べながら(スタメンなどを)考えます」。最適な布陣を整え、63年ぶりのスタートダッシュを決める。【木下大輔】
▼日本ハムが開幕2連勝。30日にも勝てば、引き分けを挟まない開幕3連勝は東映時代の62年以来、球団63年ぶりとなる。水原茂監督の62年は毒島章一、張本勲、吉田勝豊らが中軸を打ち、投手では尾崎行雄が20勝、土橋正幸が17勝を挙げ球団初の日本一になった年。開幕からは大毎、南海に各3連勝で球団最長の開幕6連勝を記録するスタートダッシュだった。