
<DeNA0-1中日>◇29日◇横浜
開幕2戦目で新生井上ドラゴンズが初勝利した。その瞬間、花冷えの横浜でネックウォーマーに埋もれた井上一樹監督の目は潤んでいた。2回2死一、三塁から8番木下がバウアーからもぎ取った先制適時打の1点を守り切り、初めて黒星をつけた。「拙攻って言うの? 投手陣が断ち切ってくれたかな。松葉に尽きる」。10安打で得点は1。それを先発松葉が7回まで、8回清水、9回松山と無失点リレーで守り切った。
3年連続最下位のチームを、ミスタードラゴンズ立浪前監督から引き継いだ。キャンプから常に明るく鼓舞し、時には自らがノックバットを握り厳しく鍛えた。キャンプ序盤にはランニングウエアで球場に入ろうとし、監督と気づかなかった警備員に止められた。笑い話としてすぐにナインにも広まったが、話す選手たちの口調は、指揮官との距離感の近さや信頼感を感じるものだった。
DeNAバウアーは前回所属した23年に5度対戦し、3つの白星を献上し1度も勝てなかった相手。その苦手右腕に土をつけた。8回には4番として育てる石川昂にも8打席目で初安打が出た。「いろんな意味での第1歩を踏み出せた試合だった。初勝利の余韻に今日だけ浸らせてもらいます」。チーム再建はまだ始まったばかりだ。【石橋隆雄】