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【とっておきメモ】佐々木朗希の11年3・11、20年1・8、25年3・19…人生の節目に雪舞う


佐々木朗希投手(23)が19日にメジャーリーグで初登板し、東京ドームでカブスを相手に3回1失点で退いたが、初勝利はならなかった。彼の球速は最速100.5マイル(約162キロ)で、5四球を与えながらも160キロ台を連発しその才能を証明した。この試合は彼の過去と現在を結ぶ象徴的な場面で、東日本大震災で多くを失った過去から、世界に羽ばたく彼の成長を示している。デビュー当日は東京に雪が降り、出発の日も雪の中で育った大船渡高校の仲間たちが激励のサプライズを用意するなど、節目ごとに彼の人生に雪が共鳴する。

19日 メジャー初登板を果たした

<カブス3-6ドジャース>◇19日◇東京ドーム

ドジャース佐々木朗希投手(23)は多くの“土産”を抱えて再び海を渡る。日本でのメジャーデビュー戦はカブス相手に最速100・5マイル(約162キロ)で3回1失点で降板し、記念すべき初白星はお預け。5四球と制球は乱れたものの初回は160キロ台を連発し、MLB大争奪戦の理由を実証した。東日本大震災で多くを失った少年は14年後、日米野球ファンの注目を集める大舞台の中心に。メジャーリーガーとして歩み出した。

   ◇   ◇   ◇

佐々木朗希がメジャーデビューした25年3月19日の朝、春も近いというのに東京には雪が降った。彼の節目には白が似合う。本人は「晴れ男です」と話し、母陽子さんは「それは晴れ女の私の影響だと思います」と胸を張る。

それでも人生の節目にはなぜか雪が舞う。大津波で多くを失い、3兄弟で身を縮めて震えていた11年3月11日の夜も、陸前高田には雪が降っていた。あの日、ロッテの選手寮へ向かう20年1月8日の朝も。

玄関を開けた。見知った顔が30人ほどいる。「全く予想してなかったです」。大船渡高野球部の仲間たちが「朗希以外」のLINEグループを極秘作成し、サプライズを練って備えた。「感動でした」。

泣いた? そう尋ねると「はい…いや、でも、すごく感動しました」と少しゴニョゴニョした。中軸をくんだチームメートの父、木下清吾さん(57)が「フレ~、フレ~、朗希!」とエールを送り始め、万歳三唱で締めた。三陸の小さな街の、小さな上京。

その朝も小雪が舞っていた。木下さんは懐かしむ。「ドラフト1位で選ばれての旅立ちの日ですしね。しっかり激励してあげたかったから、自然とね。ここから世界に羽ばたいてほしいって願いを込めて」。母が運転する車に揺られ、青いリアスの海を眺め「もう簡単には帰ってこられない場所」と思いながら。

東京ドームに万歳三唱はない。その代わり、高い志と共に海を渡る若者に、万雷のエールや拍手が降り注ぐ。見送ってくれた仲間たちは今、海の仕事をしたり、新聞記者をしたり。消防士として山火事の鎮圧にあたったり。それぞれの道で力を付ける。負けじと大きくなって帰ってくる。雪の降る頃に。【金子真仁】

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