
東京ヴェルディMF福田湧矢(25)が脳振とうからチームに復帰し、次節15日の名古屋グランパス戦(味スタ)に出場する意欲を13日の練習後に語った。
3月2日のガンバ大阪戦の後半37分、相手が蹴ったボールが至近距離から側頭部に当たり倒れた。途中交代を余儀なくされ、脳振とうルールのプロトコル(復帰への手順)に沿う形で、段階を踏みながら11日の練習からチームに合流している。
脳振とうとの闘い。前所属のG大阪時代から繰り返している。頭への衝撃を軽減するヘッドギアを装着しながらプレーしているが、今季から加入した東京Vでもキャンプ中も含め複数回、脳振とうに見舞われている。
「やりながら慣らしていくしかない。何回もやっているので怖いですよ」。G大阪戦で倒れた直後についてこう話した。「記憶が吹っ飛んで何がなんだか分からない。誰かの肩持たないと歩けなかったし、吐き気もあった」。事情を知る元所属のG大阪の選手たちは慌てて駆け寄り、みな心配した。
その過酷な経験についてこう明かした。「やりすぎて、脳振とうをやると感情をコントロールできずに泣いてしまう。気づいたらボロボロ泣いている。怖さがあるんだと思う」。努めて明るく話した上で「治療はなくて、目まいとかと闘ってやっていくしかない。(視点の)ピントが合わなくなったりズレたりする。慣れていくしかない」と受けとめた。
そして次戦の名古屋戦に向け、出場をアピール。「次から大丈夫、やれる。あとはスタッフが判断すること。相手も勝ててないから死に物狂いでくるので、それを上回る気持ちでやる。相手どうこうより、自分たちがどうかだと思う」と、強い気持ちを前面に押し出した。
湘南所属の弟、FW福田翔生の活躍が励みになっている。昨年も長く負傷離脱していたが「リハビリ頑張れたのも弟が刺激になった。弟は(JFLにいた)今治時代から苦しんでいたが、FWにコンバートされて全然やれる選手だなと思っていた。昨年からの活躍も驚きはしなかった」
ガムシャラに戦う姿勢はうり二つだ。懸命に走り、危険も顧みず相手クリアボールに体ごと飛び込んでいく。そんなプレースタイルゆえに脳振とうだけでなく、常に負傷も隣り合わせだ。
そんな福田について、城福浩監督は「彼の既往歴というか、これまで複数回脳振とうあるいは脳振とうに近い状態でプレーを中断せざるを得なかった。我々はその回数も重視しています」と気に懸けている。
専門家の意見を踏まえ、チームはピッチに戻すため慎重に慎重を期す。とはいえ、試合が始まればヘディングをしないわけにいかず、注意していてもボールが頭部に当たることもある。すべての危険を回避することは不可能であり、悩ましい。城福監督は「メディカル的な見地と彼の心情というのをくみ取りながら、しっかりと送り出していくってことだと思います」と決意を込めて話す。サッカー界では世界的に脳振とうに対する啓発が広がり、理解も深まっている。
それでも勝負の世界に生きる限り、ピッチに立てば浮き球が来れば何事もなかったように相手に体を当て、頭からボールを受けにいく。そこにアスリートの性(さが)を見る。
サッカーとはかくも美しく、過酷で非情な世界だとあらためて思う。福田がピッチに復帰する姿を願う一方で、それ以上に、健康であることを願わずにはいられない。【佐藤隆志】