starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

低反発バット導入から1年の高校野球 どうすれば打てる?「対応法」を筑波大教授が比較研究


新基準の低反発バットが高校野球に導入されて1年が経過しました。このバットは旧基準のものに比べて「トランポリン効果」が減少し、打球速度が抑えられる特性があります。その結果、強力な打撃を軸とするチームの戦略に変化が生じつつあります。筑波大の川村卓氏による研究では、新バットは打球の「芯」が狭く、手首を返さずに押し込む打撃が有利であることが示されています。監督や選手たちは、技術的対策を講じ、ライナー性の打球や機動力を駆使した新たな戦術を模索しています。高校野球の勝敗は、技術指導力や打撃の工夫が鍵を握っており、一部のチームはすでに成功を収めています。今後、柔軟な戦術を持つチームが増え、野球の多様性がさらに進化していくことが期待されます。

【イラスト】バット新旧基準とトランポリン効果

今春センバツで新基準の低反発バットが導入されてからちょうど1年になる。実際に低反発バットはどう違ったのか。筑波大硬式野球部の監督で同大教授の川村卓氏(54)は、学生とともに旧基準バットとの比較研究を、6日にコーチング学会で発表した。今後高校野球はどう変わっていくのか。今春センバツ出場校の取り組み、監督や選手たちの言葉とともに、その進化を探った。(取材班・保坂淑子、平山連、古財稜明、中島麗)

■トランポリン効果

バットをブンブン振り回す強打のチームはなくなったのか-。新基準の低反発バット導入から各方面で何度も議論され、現場の指導者や選手たちも試行錯誤を繰り返している。川村氏は「打球が飛ばなくなり、高校野球は明らかに変わってきてます」と、それぞれに対応してきている現在に熱視線を送る。

そもそも、新基準の低反発バットと、旧基準のバットとは何が違うのか。川村氏の研究チームは、ほぼ同じスイングスピードで繰り出す打球速度から、変換効率を算出し比較(打球速度÷スイングスピード)。「この数値からも旧基準バットは変換する効率が高く、打球速度が出やすいことがわかりました」。また、旧基準バットはボールを打った瞬間、わずかながらバットがたわむ。これを「トランポリン効果」と呼び、たわんだ力から反発が生まれて加速。逆に新基準バットはたわみがあまりみられず、打球スピードが出なくなる結果を導き出した。

新基準バットの大きな特徴のひとつが、「芯」と言われる打球が飛ぶであろうゾーンが狭く、打球が死んでしまうこと。そして、ゾーン(芯)がバットの少し先にあることがわかった。この結果から、昔の感覚で打つと、内角のボールに詰まる傾向に。これまで通りに手首を返して強振すると、ひっかけてファウルとなる場面が散見された。

では、この新基準バットへいかに対応していくか。「手首を返さずに押し込む。打球方向にバットが真っすぐ進む。もちろん、バットとボールの接触時間なんてわずかしかないんですが、ちょっとでもその時間を増やしバットのエネルギーをボールに伝える。そのためには手首を返さずに進行方向に対して押すようなバッティングが有利になるのです」。ボールとバットの接触が長くなると「トランポリン効果」もさらに発揮され、打球はエネルギーを得やすくなるという。

■指導力が問われる

現在も、新基準の低反発バットへの対応として「低く強い打球」を指導する声をよく耳にする。川村氏は「これからは打球が上がらない。上がると飛ばない。ライナー性の当たりが多くなるでしょう」と推測。大きな弧を描く滞空時間の長い本塁打は、新基準バットでは難しい。「守備もボテボテの打球をどれだけさばけるかが大事になるでしょう」。攻撃は単打でつなぎ、機動力を生かし、堅い守備が勝利のカギを握る。

指導力も問われる時代がきた。「旧基準バットは力任せにボールとバットを衝突させると飛ぶ。でも、新基準バットはボールとバットがちゃんと出会うように、体の使い方を覚えないと振れないんです」。指導者が技術を理解し、指導できるか。「昔みたいに、ご飯をたくさん食べて、振っておけ、という時代ではないんです」。例えば、今春センバツ出場の東洋大姫路・岡田龍生監督(63)は「今まではバットの性能に頼ったバッティングをしていたのを、これからは技術指導をきちんとして、あげていくということをしないといけないと思ったんです」と話す。履正社監督時代から木製バットで指導。そのための体づくりにも取り組み、ヤクルト山田、オリックスなどで活躍したT-岡田氏らの強打者を育てあげた。22年に東洋大姫路監督に就任し一から指導。「筋肉量の10キロアップを目指した」と、スイングスピードを上げ、技術力も高め、昨秋は17年ぶりに近畿大会を制し、今春センバツ出場。千葉黎明は新基準バット導入を視野に、3年前から機動力と堅守の野球に取り組み初出場をつかんだ。研究と対応を積み重ね、技術はあがり、高校野球のレベルはまた少しあがってきている。

新基準の低反発バット2年目。今後、高校野球はどう変わっていくのか。川村氏は「ある程度対応してくると思いますが、技術的に難しくなるバットなので。その対応ができるチームとそうじゃないチームで、かなりはっきり分かれるでしょう」と分析。これまで通り強打の野球を突き詰めるチームもあれば、方向転換で機動力野球に徹するチームも。「現状、強いのは間違いなく機動力野球。でも、強打のチームもいずれは追いついてくるでしょう。でも、新基準バットでバラエティーに富んだチームが出てきて、今までは『剛対剛』だったのが、『柔』のチームも出てきてその戦いは面白くなると思いますよ」。強打で知られた強豪校を、機動力で無名校が破る。大ドンデン返しのドラマが、これからの高校野球をより楽しく盛り上げてくれる。

    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.