
<明治安田J2:甲府3-3藤枝◇9日◇第4節◇最終日◇JITス
藤枝MYFCは劇的なドロー劇で勝ち点1を積み上げた。アウェーで甲府と3-3で打ち合った。2度リードする展開から一時は逆転されたが、後半追加タイムに途中出場のDF中村涼(22)がヘディングで同点弾。プロデビュー戦でプロ初ゴールを挙げた。明日11日で、東日本大震災の発生から14年-。岩手県出身の大卒ルーキーが被災地に思いをはせる1発を届けた。
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夢の晴れ舞台で、大仕事をやってのけた。藤枝の中村は1点を追う後半33分からピッチに立った。須藤大輔監督(47)からの指示は「セットプレーから点を取ってこい」。3バックの一角に入った後、試合終盤はパワープレー要員として前線に上がった。「絶対に点を取ってやろうという気持ちしかなかった」と中村。プロデビューの緊張感も忘れるほど無我夢中だった。
1点ビハインドで迎えた後半追加タイム6分。目安まで残り2分を切っていた中のラストチャンス、中村は右CKのファーサイドに飛び込み、頭で合わせた。「自分のストロングを出せた」。182センチの長身を生かした打点の高いヘディングで、たたきつけたシュートはゴール左隅へ。起死回生の1発で勝ち点1を呼び込んだ。
昨年8月、藤枝の特別強化指定選手に登録された。ところが昨季は、けがなどで1度もベンチ入りすることができなかった。それでも「コツコツとやってきた」。今季は先月23日のアウェー今治戦でプロ入り後、初のメンバー入り。自信を持って送り出した指揮官も「練習からやっていることを試合で表現し、点を取るというタスクもこなしてくれた」と目を細めた。
期待の大卒ルーキーは岩手県出身。試合前には、自身も被災した東日本大震災のニュースを目にした。14年前は、まだ小学生。それでも「あの日」が近づけば記憶がよみがえってくる。明日で震災発生から14年。「少しでもいいので自分のプレーで勇気づけたい」と地元への思いも口にした。
初陣で敗戦を免れる活躍を演じた後も、スタッフに交じって用具の片付けを手伝う謙虚な姿も見せた。「もっとアピールしてスタメンに定着したい」。やっとスタートラインに立った成長株。1歩ずつ階段を踏みしめていく。【神谷亮磨】
◆中村涼(なかむら・りょう)2002年(平14)7月20日生まれ、岩手県滝沢市出身。滝沢JFCドリーム-レノヴェンスオガサFC-盛岡商高を経て札幌大に進学。大学4年時の24年8月に藤枝の特別強化指定選手に登録され、今季から正式加入。182センチ、80キロ。利き足右。血液型A。