中日小笠原慎之介投手(27)がポスティングシステムを利用して米大リーグ、ナショナルズに移籍することが25日(現地時間24日)、決まった。ポスティング期限ギリギリで、AP通信によると2年総額350万ドル(約5億4300万円)のメジャー契約を勝ち取った。中日への譲渡金は70万ドル(約1億900万円)となる。東海大相模(神奈川)で2015年夏の甲子園を制し、プロ入りした左腕が、背番号「16」で新たなステージに進む。これで今オフにメジャーリーグ移籍を目指した選手たちの所属先が決まった。
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竜の左腕が、新たなステージへの切符を手に入れた。昨年12月中旬に始まったポスティング移籍の交渉期間。期限が迫る中「too early to answer(オファーが来た球団に答えを出すのはまだ早い)」と、代理人とともにFA権を持つメジャー選手の動向を見守ってきた。
交渉期限の3時間前。ナショナルズが球団の公式X(旧ツイッター)アカウントで発表した。今オフのNPBからポスティングシステムでのメジャー移籍のオオトリ。ロッテ佐々木はドジャース、阪神青柳はフィリーズとともにマイナー契約だったが、小笠原はメジャー契約を勝ち取った。
15年に東海大相模で夏の甲子園を制し、鳴り物入りで中日に入団したが、プロの壁は厚かった。プロ1年目の16年は2勝。オフに左肘の遊離軟骨除去手術に踏み切った。18年に球団最年少で開幕投手を務めたが、同年にも左肘にメスを入れた。20年は登板4試合に終わった。
「野球人生が終わる」と一時は覚悟したどん底からメジャー移籍を手に入れた。21年1月は、沢村賞左腕の先輩、中日大野の自主トレに参加。体と心を鍛え直した。同年に初めて規定投球回に到達すると、4年連続規定投球回をクリアした。
23年からは単独で米国自主トレを続けた。ポスティングシステムでの移籍を球団に認められた今オフは、米シアトルのトレーニング施設「ドライブライン・ベースボール」で投球フォーム、球質を分析。「僕は自分のやらなきゃいけないことを準備をしておく。(日本でも米国でも)野球をやることは変わらない」と目の前の課題に黙々と向き合った。同施設の公式X(旧ツイッター)では「2年契約おめでとう」と祝福され「新スイーパーを持ち球に加え、NPBからMLBへ乗り込む」と紹介された。
ナショナルズは昨季71勝91敗で、ナ・リーグ東地区5球団中の4位。19年のワールドシリーズ制覇後は、主力選手の流出などもあり、低迷中。日本人選手の所属は05年の大家友和以来、20年ぶりとなる。栄光と底辺を知る和製左腕が、新天地の光となるか。注目の1年になる。【伊東大介】
◆ワシントン・ナショナルズ 球団拡張の69年にモントリオール・エクスポズとして史上初めて米国以外(カナダ)に本拠地を置いて創設。経営難などにより01年にMLBの管轄下に入り、05年に首都ワシントンに移転し、現在のチーム名に変更。19年に地区2位からポストシーズンを勝ち上がり、初出場のワールドシリーズを制したが以降は低迷。エクスポズ時代を含め日本選手は伊良部秀輝、吉井理人、大家友和。本拠地は08年開場のナショナルズパーク。
◆ナショナルズの先発ローテ 昨季10勝を挙げた左腕ゴアと右腕アービンに加え、今オフはホワイトソックスから19年球宴選出の右腕ソロカを獲得。さらに通算50勝右腕ウィリアムズと再契約し、これに小笠原を加えた5人がローテ入りする見通し。オープン戦次第では、昨季デビューした左腕パーカーや右腕ハーツら若手が食い込む可能性もある。
◆ナショナルズでプレーした日本人 過去3人おり、前身のエクスポズ時代の00年、ヤンキースから移籍した伊良部が初めて所属。翌01年はロッキーズから吉井、シーズン途中の7月にレッドソックスから大家が移籍し、同時に3投手が在籍した。伊良部、吉井はともに2年で退団。大家は現名称のナショナルズとなった05年途中までプレーし、02年に13勝を挙げるなど5年で31勝した。
▽中日高橋宏(小笠原のナショナルズ移籍に)「(期間ギリギリで)さすがにひやひやしました。メジャー契約取ってくれたことは、いろんな人にとってプラスになると思う。どういう成績を残すのか楽しみ。あとは任せてくださいという感じで送り出したい。僕が先頭に立って引っ張っていけたらと思います」