<全国高校サッカー選手権:東海大相模3-0東北学院>◇2日◇3回戦◇Uvanceとどろきスタジアムby Fujitsu
青きイレブンの快進撃が終わった。3回戦で東北学院(宮城)は初出場の東海大相模(神奈川)に0-3の完敗。前半に2点を与えると、後半にもダメ押し弾を許し、42大会ぶりの8強とはならなかった。だが、MF佐々木智貴(3年)が1回戦でゴールを決め、37大会ぶりの出場で躍動。同校OBで、前回出場時のメンバーでもある父善博さん(54)と世代を超えた物語を紡いだ。
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佐々木智はベンチで終戦の笛を聞いた。先発で出場したがシュートを1本も打てず、見せ場なく、後半26分で退いた。J1川崎の本拠地での一戦。「普段やらないピッチで緊張感がありました」と正直に打ち明けた。2回戦では優勝経験もある滝川二(兵庫)を破った。快進撃が止まり「ベスト8の目標をかなえてみんなで笑って終わりたかったんですけど、自分にとってはやれることは出し切りました」と涙をこらえながら口にした。
ゴールを決めた1回戦の奈良育英戦後、LINEにメッセージが届いた。「感動した」。父善博さんからだった。自宅での会話はドラマなどの話ばかり。サッカーの話はほとんどしない。「小学校までは指導してもらっていたんですけど、中学から指導されることはなくなりましたね」と少し寂しそうに話した。
父には訳があった。「中学になれば自分で考えてプレーもしなくてはいけないので。よく足がつるので『水分補給しろよ』くらいですね」。成長を期待し、あえて突き放した。それでも、見守ってきたことは変わらない。この日はスタンドから。37年前、初戦敗退に終わった善博さんは「親を超えて2勝しているので、十分です。OBとして全国に行ってくれるのが一番うれしい。ましてや、保護者として携われたのでうれしい限りです」としみじみと話した。
佐々木智にとって、父親は憧れの存在だ。「お父さんの方がサッカーに関しては全然上で、それ以上に有名になりたくてやってきました」。だから、素直にこう言えた。「(2勝して)お父さんを超えらたことはうれしかったです」。背中を追いかけた末に、37年ぶりの選手権で足跡を残した。【木村有優】
○…試合終了まで残り9分で3点目を献上した。だが、全員で前を向き、体を張って戦い抜いた。部員143人の大所帯を束ねた阿部幹大主将(3年)は、不利な状況でも声をかけ続けチームを鼓舞した。「自分としても、ここまで来られたのは夢物語みたいでした。最後まで諦めなかったというよりは、諦める選択肢がありませんでした」と、吹っ切れた表情だった。
▼東北学院・橋本俊一監督(息子のGK脩礼とも臨んだ大会は3回戦で敗れ)「いろんな目標があって『まずは1勝する』だったり『年を越す』だったりと、1つ1つ目標を果たすことができて、今日は決勝戦のつもりで戦いました。東海大相模さん相手に体張って、積極的にプレーをしてくれたと思います」