主砲を支えた縁の下の力持ちがいる。ソフトバンク有馬大智リハビリアスレチックトレーナー(35)が、今季の柳田悠岐外野手(36)復活の舞台裏を明かした。柳田は5月31日に「右半腱様筋損傷」の重傷を負い、4カ月弱のリハビリ生活。同学年の有馬トレーナーは親身に寄り添う姿勢で再起を後押しした。シーズン最終盤、ポストシーズンの戦列復帰に導いた、そのリハビリ中の秘話を語った。【取材・構成=只松憲】
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今季リーグ優勝を果たしたソフトバンクには、6月1日~9月29日まで“いるべき人”がいなかった。柳田は5月31日の広島戦で右太もも裏を大けがし、全治4カ月と診断された。今季中の復帰は絶望的だったが、9月30日に1軍復帰。早期回復には縁の下の力持ちがいた。
柳田のリハビリを担当した有馬トレーナーが舞台裏を明かした。「モチベーションを切らすことなく、きちんと我々トレーナーの話を真剣に聞いてくださった。本当にびっくりしました」。リハビリチームの代表として柳田の復帰プランを綿密に作成。プラン通りに進むか不安が募る中、柳田から忘れられない言葉をもらった。
「『あなたたちはリハビリのプロだから、こういうトレーニングをした方がいいと言うのであればきちんとします』と言われたのを覚えています。一流選手でありながら謙虚な方だなと思いました」
リハビリ組の選手は焦り、不安などの衝動に駆られることがある。復帰を急いだあげく再発する例も多い。だが「柳田選手にNOはなかった」。穏やかな心で淡々とプロセスを踏んでいたという。「こちらが準備したものを全部受けてくださった。かなりスムーズにいきましたね。プランよりも早く復帰しました」。柳田とリハビリチーム、互いの信頼関係が結実し、早期復帰につながった。柳田も「有馬さんやトレーナーの皆さんが支えてくれたおかげです」と感謝していた。
有馬トレーナーは柳田のウオーキングやジョギングに必ず付き添った。初対面だったが同学年ですぐに打ち解けた。互いの家族の話もしばしば。有馬トレーナーは米メッツで職務歴があり「英語は若い時から話せた方がいいよね。こどもにも英語教えたほうがいいかな」と話す「父柳田」の顔も見た。
柳田がリハビリ組を卒業した日は「送り出す気持ち」とリハビリチーム全員で最後のスプリントを行った。中心には笑顔の柳田がいた。「彼が球場に入ってから出るまではストレスのないスケジュールを組んだつもりです。リハビリチームみんなでサポートできたし、個人的にも復活されてうれしかった」。親身に寄り添って復活を後押し。チームプレーで柳田を1軍に送った。
▼柳田故障から復帰まで 5月31日の交流戦広島戦(みずほペイペイドーム)の3回、二ゴロを放って一塁へ走った際に右ハムストリングを痛めた。翌6月1日に佐賀県内の病院で診察を受け、「右半腱様筋損傷」と診断、全治4カ月の重傷だったことが判明。6月半ばにリハビリ組に合流。9月20日の2軍戦で実戦復帰。同23日のリーグVには間に合わなかったが、2軍戦6試合に出場し、同30日に1軍復帰、即「2番指名打者」で先発出場した。