プロ野球の第3回現役ドラフトが9日、オンラインで行われ、阪神は巨人畠世周投手(30)を指名した。近大出身で、1年目から6勝するなど未来を嘱望された右腕。手術の影響でこの2年は1試合登板だが、十分に再生可能と判断した。阪神から見れば、TG場外バトルで国内FA権を行使した大山の巨人流出を防いだばかり。大竹、漆原らに続く「現ドラ出世」を実現させ、巨人からV奪回といきたい。阪神からは浜地真澄投手(26)がDeNAに指名された。
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午後1時の開始から数十分が経過していた。浜地をDeNAに指名されたことにより、阪神に順番が回ってきた。契約保留選手の公示があった今月2日から、藤川監督も交えて獲得希望選手を協議。そうして狙いを定めた30歳右腕、畠の指名に成功した。
阪神は近大に在学している当時から地元の逸材として注目していた。ドラフト時は縁がなかったものの、同一リーグで対戦を重ね、力量も熟知している。
昨年3月に右肘のクリーニング手術を受け、この2年間は中継ぎで1試合登板しただけ。それでも阪神の嶌村球団本部長は「直球が強くてカットボール、スライダー、チェンジアップを駆使する。うちの投手陣の中に入っても全然やっていけるし、先発、中継ぎの両方をできるタイプ」と高い評価を隠さない。
阪神の投手陣は来季も先発、リリーフとも質量豊富。右の先発だけでも今季13勝の才木を筆頭に西勇、村上、ビーズリーら実力派がずらり並ぶ。1軍入りすら容易ではないが、新人で6勝した能力はまだまだ開花し切っていないとみる。
またまた「現ドラ出世」の予感が漂う。3度目の現役ドラフト。阪神は新制度の恩恵を最も受けている球団といえる。22年の大竹は1年目の23年に12勝2敗でリーグ優勝、日本一に貢献。今季も11勝7敗と活躍した。23年の漆原は今季厳しい場面を何度も任され、自己最多38試合に登板した。
かつては「禁断」と言われたTG間の移籍。昨年の現役ドラフトで巨人に指名された馬場、自由契約で巨人に移ったケラーに次ぐケースとなった。今オフはFA宣言した阪神大山に巨人が巨額オファー。阿部監督や坂本らが熱烈ラブコールする異例の展開になりながら、阪神はぎりぎりで流出を防いでいた。そして、今度はその巨人から選手を獲得。今季、優勝を最後まで争った両球団の争いは、さらに熱くなりそうだ。
畠は8年間在籍した巨人への感謝を語り「恩返しができるよう、阪神タイガースの力になれるよう、目いっぱい腕を振っていきます」と球団を通じてコメントした。藤川新監督のもと、V奪回を狙う阪神。インパクトのある補強に成功した。【柏原誠】
▽巨人阿部監督 畠投手は自分の持ち味を生かし、来季から新たなチームでさらなる飛躍を期待しています。
▽畠世周(はたけ・せいしゅう)
◆出身 1994年(平6)5月31日生まれ、広島県呉市出身。
◆実は左利き 小学生のときに両親の提案で、ポジションの選択肢を増やすため右投げに矯正した。
◆球歴 川尻小3年から川尻ヤングパワーズで野球を始める。川尻中では軟式野球部。近大福山では甲子園出場なし。3年夏の広島大会4回戦でのちに巨人で同僚になる田口麗斗がいた広島新庄に敗れる。近大では2年春にリーグ戦デビュー。3年秋に6勝4完封、リーグタイ記録の3連続完封勝ち。通算13勝13敗。
◆プロデビュー 16年ドラフト2位で巨人入り。1年目から先発で6勝を挙げ将来のエース候補と期待を受ける。20年にはヤクルト戦でプロ初完封。21年からはほぼ救援に専念。同年は52試合に登板、初セーブ。8年間で通算119試合、19勝12敗、19ホールド、2セーブ、防御率3・21。
◆阪神との縁 新人年の17年9月、阪神戦の初回に上本博紀(現コーチ)に頭部死球。試合開始4球で危険球退場した。
◆サイズなど 186センチ、82キロ。右投げ左打ち。血液型AB。趣味は海釣り。