DeNAから戦力外通告を受けた大田泰示外野手(34)が、今季限りで現役を引退することが14日、分かった。08年ドラフト1位で巨人に入団。松井秀喜の背番号「55」を受け継ぎ、大きな期待を背負ったが、レギュラーには定着できず、16年オフに日本ハムにトレード移籍した。21年オフに日本ハムを自由契約となり、DeNAに加入。走攻守で闘志あふれるダイナミックなプレーでファンに愛された男が、現役生活に別れを告げる。
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常に全力を貫いた男らしい決断だった。12球団合同トライアウトが行われたこの日、大田がユニホームを脱ぐことを決めた。DeNAから戦力外通告を受けてから1カ月半。現役続行を目指し、心身の準備を続けたが、この日までに12球団からオファーはなく、自らのプロ野球人生にピリオドを打った。
東海大相模では高校通算65発の超高校級スラッガーで注目され、ソフトバンクとの競合の末にドラフト1位で巨人に入団した。ヤンキースに移籍した松井秀喜氏の背番号「55」を継承。大きな期待を背負ったが、巨人ではレギュラーに定着できず、16年オフにトレード移籍した日本ハムで潜在能力が一気に開花した。
走攻守3拍子そろった、ダイナミックなプレーでファンを魅了した。移籍1年目に自身初の規定打席に到達し、17年から4年連続100試合以上に出場。19年に自己最多の20本塁打をマークした。20年にはゴールデングラブ賞を初受賞したが、21年シーズン後に自由契約となり、3球団目となるDeNAに移籍した。
高校時代から思い入れのある横浜スタジアムを本拠地に、出場数以上の存在感を示した。限られた出番で勝負強さを発揮。昨年9月17日の阪神戦では、球団初の代打本塁打での1-0の勝利を決めた。ベンチで仲間を鼓舞する姿や野球に取り組む姿勢への球団の評価も高く、お立ち台での「ヨコハマ、サイコー」はファンの間で人気で、タオルも販売された。
今季は、3月のオープン戦で左太もも裏を肉離れした影響で出遅れたが、イースタン・リーグでは8、9月に3割超え。勝負の秋に備えたが、プロ入り後初めて1軍出場がなかった。戦力外が発表された後の10月5日のファーム選手権では2安打を放ち、球団史上初のファーム日本一に貢献。1試合、1球、1勝への貪欲さは変わらず、大田泰示の生きざまを示した。
◆大田泰示(おおた・たいし)1990年(平2)6月9日生まれ、広島県福山市出身。東海大相模では甲子園出場なしも、高校通算65本塁打。08年ドラフト1位で巨人入団。09~13年は松井秀喜氏の背番号55を継承。14年9月27日DeNA戦で巨人史上81代目4番打者を務めた。16年オフ、吉川光夫、石川慎吾との2対2トレードで公文克彦とともに日本ハム移籍。20年ゴールデングラブ賞。21年オフに自由契約になり、DeNA移籍。今季推定年俸5000万円。188センチ、96キロ。右投げ右打ち。