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【潜入】なぜ阪神2軍は「利益0円」で徳島日帰り遠征を敢行したのか 逆転サヨナラ負け後に理念


四国IL・徳島戦後の「ミート&グリート」でファンと記念撮影する阪神の選手たち、後列左から椎葉、湯浅、鈴木、百崎(撮影・佐井陽介)

<潜入>

阪神2軍が16日、四国IL・徳島とのビジターゲーム(むつみスタジアム)を戦った。異例の日帰り遠征で時間が限られる中、試合後には野球教室やサイン会、写真撮影会も実施。一方でチケット収入などの売り上げはすべて徳島が受け取る形だという。チームはなぜ「利益0円」でバス往復4時間超の“弾丸遠征”を敢行したのか。球団が掲げる理念を深掘りした。【取材・構成=佐井陽介】

  ◇  ◇  ◇

まだ蒸し暑さが残る午後5時30分。阪神2軍ナインは笑顔を絶やさず、子供たちと触れ合っていた。日帰りの徳島遠征。逆転サヨナラ負けを喫した直後、心身ともにヘトヘトだったはずだ。それでも30分間の野球教室やサイン会、写真撮影会を実施。熱心にアドバイスを送った高知出身の栄枝は「それがプロ野球選手の存在意義なので。未来につないでいかないといけない」と言葉に力を込めた。

チームはこの日、午前8時40分に兵庫・西宮市内の鳴尾浜球場を出発した。片道2時間超のバス移動を終えると、むつみスタジアムには長蛇の列ができていた。前売り券500枚は発売当日に即完売。当日券も売れ行きは良く、独立リーグ球団の本拠地試合としては破格の観客3219人を集めた。四国IL戦の集客は通常数百人程度。阪神で発足した独立リーグ担当班の1人、球団本部企画統括部次長の馬場哲也さんは「大成功ですね」とホッと胸をなで下ろした。

往復4時間超の「弾丸遠征」。チケット収入などの売り上げはすべて徳島が受け取る。それでも阪神2軍は徳島に向かった。背景には野球振興に懸ける情熱が存在する。プロ野球界では今年からNPB12球団の1、2軍とファーム新参加2球団(オイシックス、くふうハヤテ)で計14の都道府県に本拠地が置かれている。一方で、まだ33府県の空白地域が残されているのも事実。阪神は地域に根付く独立リーグ球団の発展が野球人口減少の歯止めに欠かせないと考え、積極的に連携を進めている。

2軍は昨季も独立リーグ勢と計11試合を戦い、日本海Lの石川、富山戦では遠征している。独立リーグ担当班は現地で各球団からヒアリングし、指導者派遣と本拠地試合の開催を願う声を把握。今回の徳島日帰り遠征もそれらの意見を反映させた試みとなった。コンセプトは「選手をより身近に感じてもらい、もっと野球に興味を持ってもらう」。試合後のイベント実施など選手への負担は小さくないが、担当班が和田2軍監督たちに丁寧に意図を説明した上で理解を得た。

「徳島市民応援デー」と銘打たれ、徳島市在住の小中高生が無料で入場できた一戦は白熱の試合展開となった。一方でファンサービスも多岐にわたった。有料の練習見学会、サインボール投げ入れ、選手のサイン色紙などが当たる試合途中の抽選会…。試合後には阪神ビジターゲームでは初のイベントも開催された。

野球教室では「キャッチボールクラシック」と呼ばれ、2分間でキャッチボールの回数を競うゲームを選手と子供で実施。徳島のグッズを7000円以上購入した先着20人限定で、徳島OBのドラフト2位椎葉、湯浅ら4人とサイン会、写真撮影会を行える「ミート&グリート」にも初挑戦した。こちらは数分間で20人分が完売したそうだ。

「ミート&グリート」を企画した阪神球団本部企画統括部の松本悦子さんも独立リーグ担当班の1人。「選手の練習、コンディショニングが一番大事。そこを狂わさない程度で親世代の満足度も上げられないかと考えました」と振り返る。もちろん、イベント関連の売り上げもすべて徳島に入る。阪神は「利益0円」で徳島の財政面、地域活性化に貢献した形だ。

徳島の南啓介球団社長によれば、通常の四国IL戦の場合はチケット、グッズ、飲食の合計売り上げが約20万円で利益は約10万円のイメージだが、今回の一戦は約450万円の売り上げで約300万円の利益が見込まれるという。阪神2軍ナインは午後6時20分、せわしなく徳島から帰路に就いた。野球振興と独立リーグ球団のサポート。7時間30分の徳島滞在には、2つの大義が詰め込まれていた。

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〇…徳島の南啓介球団社長は今後もチーム強化を推し進めていく。昨年は大型の室内練習場をオープン。四国ILで22年後期から24年前期まで4期連続で優勝している。「強くなれば、いろんな球団が阪神さんのように徳島と試合をしようと考えてくれると思うので。私たちはスポーツで地域を活性化させるという使命を持って球団を運営しています」。徳島県がNPBの1軍公式戦から数十年も遠ざかる中、まずは積極的にNPB球団との交流試合開催を模索していく。

◆四国IL・徳島戦 6月16日に交流試合として開催された。阪神は5回にドラフト4位百崎、同3位山田の2者連続適時打で2点先制。投手陣は4回無失点の先発鈴木から育成ドラフト1位松原、ベタンセス、岡留が無失点リレーも、8回から登板したドラフト2位椎葉が2点リードの9回、代打今村に逆転サヨナラ3ランを浴びた。徳島も先発工藤が最速153キロを計測して3回無失点に抑えるなど、投手陣が力投した。

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