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国枝、新たな境地で=燃え尽きた夏から進化―東京パラから1年(2)


 1年前の夏。車いすテニスの国枝慎吾(ユニクロ)は、自国開催でのパラリンピックで金メダルという悲願をかなえた。「人生の中で一番重い勝利」。数々のタイトルを獲得してきた男にとっても格別の瞬間だった。  ただ、得た物が大きい分、その反動は想像以上だった。「パラリンピックが終わって、燃え尽き症候群みたいなのを体感した。いつやめようかなと考えるような日々だった」と振り返る。  心に再び火が付いたのが1月の全豪オープンだった。決勝での最終セットで見せたバックハンドのダウンザラインに、確かな手応えがあった。11度目の優勝。「キャリアでベストなプレーができた」。さらに、「やるべき事が見つかったというか、自分自身のパフォーマンスをどれだけ上げられるかに集中することができるようになった」と新たな境地に達した。  プレーは鋭さを増した。6月に全仏オープンを制し、7月のウィンブルドンで初優勝して男子初の生涯グランドスラム(四大大会全制覇)を達成。9月の全米オープンでは年間グランドスラムを照準に入れる。キャリアハイとも言えるシーズンを送っている。  国枝は、東京パラリンピックが日本社会に及ぼした影響を「まだ実感していない」と話す。東京大会の後は、新型コロナウイルスの影響で日本でプレーしていないためだ。10月、楽天ジャパン・オープンの車いす部門にエントリーする。「お客さんの前でプレーするのはいい。それが日本の方々の前ならなおさら。昨年、東京でできなかったことなので楽しみ」。昨夏の主役は凱旋(がいせん)を心待ちにしている。 (了) 【時事通信社】 〔写真説明〕ウィンブルドンテニス車いす部門男子シングルスで初優勝し、トロフィーを掲げる国枝慎吾=7月10日、英国・ウィンブルドン
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