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106年の歴史を受け継ぎ地域医療と統合医療の未来を描く——サツマ薬局


サツマ薬局の野口裕司社長は、漢方相談の専門性を強化し、調剤薬局やEC事業に注力することで、年商を大幅に向上させています。創業当初は異なる業種を展開していたが、薬局に転身し、現在は106年を迎えました。1998年に調剤薬局を開局し、2004年からはネット販売を開始。オンラインでの販売にはカウンセリングを取り入れ、顧客への付加価値を提供しています。海外展開としてロシア市場にも進出。アスリート向けサプリのOEM供給など多角的な事業展開も行っています。組織改革としてアメーバ経営を導入し、収益構造を明確化、効率的な運営を実現。また、統合医療の情報発信と地域密着型のビジネスモデルを整え、地域に貢献しています。今後も成長の余地がある在宅医療分野の強化を図り、医療難民支援と正確な医療情報の提供に注力します。

株式会社サツマ薬局
(画像=株式会社サツマ薬局)
野口 裕司 ――株式会社サツマ薬局 代表取締役社長
兵庫県神戸市出身のサツマ薬局4代目社長。
1997年に入社し、漢方相談の専門性を強化。
1998年に調剤薬局「HAT神戸店」を開局し、年商3億円を達成。
2004年からEC事業を開始し、ネット販売を拡大、現在は年商6億5000万円を実現。
2016年に父から社長職を継承し、経営改革を推進。
地域医療と健康相談の質向上を経営理念に掲げ、創業106年の老舗薬局を率いながら、地域社会に貢献する企業を目指している。
昭和7年に神戸市中央区で創業、106年を迎える老舗薬局。地域密着型の薬局運営とネット事業の融合により持続可能な成長を追求。漢方相談や健康相談を通じて顧客に寄り添う。ネット通販では医薬品、サプリメント、化粧品を販売、オリジナル商品の開発や定期購入モデルの導入により、年商6億5000万円を達成。企業理念は「すべてはお客様のために」であり、質の高い情報発信と商品の提案を通じ、顧客の健康を支援し続けている。

これまでの事業変遷について

——創業から現在に至るまでの変遷を教えていただけますか?

野口 もともと鹿児島から出てきた曾祖母が、現在の地で創業して106年目を迎えています。社名の「サツマ薬局」は、薩摩藩に由来しています。曾祖母は西郷隆盛に恩を受けたことがあるというエピソードも残っています。

創業当初はクリーニング業や寿司屋を営んでいましたが、その後、薬局へと事業転換しました。私は四代目で、会社が株式会社になったのは1978年です。2016年に正式に代替わりしましたが、実質的には2006年から経営を任されていました。

薬局の構成としては、町中にある一般的な薬局から始まりましたが、今では漢方相談を主体にした薬局と、調剤薬局の二つの方向で経営の舵を切りかえました。さらに、約20年前からインターネット通販にも進出し、漢方相談薬局、調剤薬局、ネット通販の三本柱で事業を展開しています。

阪神大震災では本社が全壊しましたが、それを機に本社ビルを建て替え、調剤専門の薬局を作るなど、ある意味事業を拡大するきっかけにもなりました。

——非常に長い歴史と多様な事業展開があったのですね。インターネット通販の進出についてもお伺いしたいのですが、自社のホームページとモールへの出店について、どのような工夫をされていますか?

野口 自社サイトとモールでの集客については、楽天やYahoo!、Amazonなどのモールでの売上が主ですが、自社サイトからの流通も増やしています。オンラインでの販売においては、単なる商品販売ではなく、カウンセリングや漢方相談を取り入れています。これにより、疾患に基づく悩みを解決するために検索して訪れるお客様に対して、より密接なサポートができています。

——ネット通販で新規のお客様がリピーターになることも多いのでしょうか?

野口 そうですね。例えばYahoo!で商品を購入したお客様が症状改善しない場合や他の方法を探している場合、弊社に相談してくることもあります。この柔軟な対応が他社との差別化に繋がっています。漢方薬の取り扱いや相談ができる点でサプリメント専門店とも異なり、統合医療の情報を提供できるのが強みです。

自社事業の強みについて

——優位性や実績についてお話しいただければと思います。

野口 自社では「相談」「調剤」「ネット販売」の三つの柱を立てています。これによって、一つの分野が低迷しても他分野で補完できるようにしています。それぞれの集客によって、相互にお客様を呼び込むことができる形になっています。

——具体的にはどのように進めているのでしょうか?

野口 例えば、通販で購入した方から相談を受けたり、調剤で来られた方から相談を受けたりと、総合的に対応できる形を整えています。また、地域医療機関との連携を進め、病院や鍼灸師さんなどと情報共有をすることで、地域医療の質を向上させています。

——オリジナル商品についてもお聞かせいただけますか?

野口 オリジナル商品はサプリメントで、病気や疾患の改善を目的に商品開発をしています。例えば冬虫夏草で、耳鳴りや難聴の症状に対応する商品があります。高齢者向けに開発しており、定期購入のサブスクリプションモデルで提供しています。

——どのように販売されているのでしょうか?

野口 我々はtoB向けの販売も行っており、オリジナル商品を大手スニーカーメーカーにOEM供給しています。また、海外販路向けにロシアのドラッグストアとも取引を開始しました。

——スニーカーメーカーとの連携は意外ですね。

野口 アスリートの方が多くサプリメントを利用していて、サメの肝油からとった血中酸素濃度を上げるサプリメントが好評です。事業部長が元アスリートで、走った後に商品を試したところ非常に回復が早かったというフィードバックをいただいています。

特に東洋医学や漢方医学に興味を持つ企業や個人が増えており、この切り口での需要は拡大しています。

——ロシア市場についてもお話しいただけますか?

野口 ロシアはサプリメントに関しては後進国で、市場がまだ成熟していません。ですので動き出すことで知名度が増し、販売促進につながると考えています。

国内市場だけでは限界があるため海外展開を模索していて、ロシア市場は今年の7月から流通が始まりました。

ぶつかった壁やその乗り越え方

——これまでの困難をどう乗り越えてきたのかお聞かせください。

野口 事業を引き継いだ時、3期連続赤字で約2億円の負債がありました。組織自体はある程度の従業員数と売上がありましたが、組織化が進んでいませんでした。そのため、小さい問題で利益にリスクが生じる状況でした。

——どのように改善されたのでしょうか?

野口 稲盛和夫さんの塾に入り、アメーバ経営を学びました。部門別会計を導入することで利益を明確化し、個人や部署ごとに責任を委譲しました。これにより収益構造が明確になり、収益率も改善しました。

——組織の成長過程でどのような変化があったのでしょうか?

野口 事業を引き継ぐ前は売上が2億円ほどでしたが、6億5千万円ほどに成長しました。部門別会計を導入したことで、毎月の数字が明確になり、各スタッフの力量が向上したと感じます。

——ネット販売と調剤の人材は、異なるバックグラウンドを持っているのでしょうか?

野口 調剤に関しては薬剤師の資格が必要で、安全性や命に関わる業務が中心です。 ネット販売の方は他業種からの転職者が多く、ネット通販というハードワークな環境から薬局の通販に移行してきた人が多いです。直接患者様やお客様に対応しながら、ウェブ制作もできるという働きやすい職場になっています。

——薬剤師さんの確保は難しいのですか?

野口 25年前に医薬分業で調剤薬局は増えましたが、ビジネスモデルとしては今は衰退期に入っています。収益性の低い店舗は統廃合しているため、少し確保しやすい状況にはなっていますが、1人の薬剤師確保には35%の紹介料が必要です。

——人材確保はどの業界でも課題ですね。

野口 労働人口が減っているため、効率的で働きやすい職場を作らなければなりません。給与や休みだけではやりがいがないと続かないという声も増えています。

◆4:今後の経営・事業の展望

——次は今後の展望について、新規事業やファイナンス戦略についてもお聞かせいただければと思います。

野口 M&Aに関しては、昨年在宅専門の薬局をM&Aで購入しました。店頭に来られるお客様だけでなく、施設や在宅分野での処方箋薬配達や移動を行う分野は、まだまだ成長の余地があります。

企業理念としては、統合医療の情報を発信し、医療難民を救うことを目指しています。正確な医療情報を発信することで、セルフケアを目指す方々にうまく情報を届けたいと思っています。商品開発や講演会、イベントを通じてSNSでの情報発信にも力を入れています。

それだけでは足りないので、メディア広報の部署を設立し、会社としての意図を世間に伝える体制を整えたいと考えています。 オリジナル商品の販売や継続率を上げることも目指しています。長期的に利用していただくことで、体質改善につながると考えています。

——確かに継続的に利用することで効果が出る商品は多いですよね。

野口 はい、自然に体質改善を目指す方法や商材があることを、より多くの方に知っていただけるように情報を発信しています。西洋医学の薬だけでなく、漢方などの選択肢もあります。

日本の医療は国民皆保険ですので西洋医学に偏りがちですが、情報が偏っているため治る病気も治らないことがありますね。

正確な情報を得て対処すれば、医療費も軽減していきますし、慢性病に関しても西洋医学は対症療法に過ぎません。東洋医学を取り入れることで根本治療が可能です。

——その情報がもっと広まれば、多くの人が救われるでしょうね。

野口 コロナ以降、西洋医学の限界を感じている人が増えています。自分で治す意識を持つ人も増えてきています。地域に根ざした病院との連携も重要です。大手ではできない細かい部分での対応が、地域を絞ることで可能になります。

——ドラッグストアは競合になるのでしょうか?

野口 調剤に関してはドラッグストアが力を入れてきていますが、エリア戦略や在宅分野の強化で、影響は少ないと思います。

ZUU onlineユーザーへ一言

——読者の皆様に一言お願いいたします。

野口 先ほどの話とも関連しますが、やはり統合医療の情報をどのように発信していくかが重要です。そこに注目していただけるような形になれば、社会も良くなりますし、患者さんも改善しやすくなると思います。情報発信のベースとして、この部分を大切にしていきたいと考えています。

私自身、子供の頃は体が非常に弱く、入退院を繰り返していました。しかし、中学の頃に漢方薬を使った治療を受け、入退院することがなくなり、ほぼ完治することができました。この経験が私のベースとなっており、漢方薬の素晴らしさを広めたいという思いにつながっています。

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