クオールHD Research Memo(9):第一三共エスファは2028年3月期に営業利益で前期比2倍増を目指す
クオールホールディングスは、主力の薬局事業で自社出店10~20店舗とM&A 20~30店舗を組み合わせ、2026年までに店舗数1,000店を達成する。医療DXではオンライン薬局「クオールどこでも薬局」の拡充とローソン内オンライン服薬指導ブースを推進。健康食品の共同開発や在宅調剤サービス強化で調剤報酬外収益を拡大する。BPO事業では子会社のオーガニック成長と周辺領域M&Aで年率二桁成長を狙い、CSOやCROの体制拡充、医療職マッチングも強化。製薬事業では第一三共エスファが2028年3月期に売上高1,000億円(前期比1.3倍)、営業利益110億円(同2倍)を目指す。グループ薬局を通じた製品開発と販売でシナジーを最大化し、原価・経費見直しによる利益率向上を図る。
2. 事業別成長戦略
(1) 薬局事業
薬局事業の成長戦略として、「戦略的出店による規模の拡大」「医療DXの推進」「調剤報酬以外の収益拡大」「高付加価値な薬局サービス」の4点に取り組み、持続的な成長を目指す。
a) 戦略的出店による規模の拡大
店舗数については自社出店で年間10~20店舗を行い、M&Aにより年間20~30店舗を獲得することで拡大を続ける。出店ターゲットは3大都市圏を中心に人口の多いエリアで、ドミナント出店による効率的な店舗数拡大と高収益が期待できる店舗の開発を進める。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携を取りやすいところを対象に進める方針だ。前期末で948店舗だったので、2026年内には1,000店舗に到達する見通し。
調剤薬局数は2023年度末で約6.2万店と緩やかながら増加傾向にあるが、ここ数年はドラッグストアの出店拡大により競争が激化するなかで、大手企業によるM&Aが進む格好となっている。直近では2025年5月にアインホールディングス<9627>が、国内で約800店舗を展開する「さくら薬局グループ」の買収を発表するなど大型M&A案件も出始めており、今後も大手企業の寡占化が進むことが予想される。このため市場規模が今後も頭打ちの状況で推移したとしても店舗数の拡大によって持続的な成長は可能と弊社では考えている。なお、M&Aの基準について、同社は売上規模やシナジー効果の有無、投資回収期間など、社内で厳格な基準を定めて可否を判断している。
b) 医療DXの推進(オンラインサービスの拡充)
医療DXの推進について、同社は店舗運営のDX化による生産性向上とオンラインサービスの拡充による顧客獲得の両面で進めている。オンラインサービスに関してはオンライン専門薬局「クオールどこでも薬局」の増設を検討しているほか、オンライン服薬指導の規制緩和※に備えて協業先であるローソンとの連携を進める。コンビニ内に設置されたオンラインブースから遠隔地の薬剤師とオンライン通話し、服薬指導を受けることで店舗内にて一般用医薬品(市販薬)の販売が可能となる。
※ 医薬品医療機器法(薬機法)改正法案が2025年の通常国会で通過し、2年以内に施行される。
c) 調剤報酬以外の収益拡大
調剤報酬以外の収益拡大施策として、健康・未病領域での新規事業を育成する。現在、サントリーウエルネス(株)など食品メーカーと共同で健康食品等の開発販売を行っており、規模は小さいながらも2025年3月期は前期比で50%成長となった。健康食品市場は健康意識の高まりや超高齢化社会が進む中で安定成長が見込まれており、同社も同事業に注力することで収益拡大につなげていく。
d) 高付加価値な薬局サービス
高度な薬剤師教育をもとに、医薬品のスペシャリストとして需要が旺盛な在宅調剤事サービスの取り組みを強化する。大手介護施設運営事業者との連携により介護施設向けの開拓に注力している。在宅調剤の実績は地域のかかりつけ薬局としての評価ポイントにもなっており、同取り組みを推進することで技術料の加算点も引き上げていく。
(2) BPO事業
BPO事業では、各子会社のオーガニック成長により年率2ケタ成長を目指すほか、シナジーが見込める周辺領域のM&Aも進める。アポプラスステーションでは、CSO事業においてオンコロジーなどスペシャリティ領域のMR人材の育成に注力し、将来的にCMR数1,000名体制を目指す。また、CRO事業は大手食品メーカーからの受託試験を中心に伸ばしていく。
アポプラスキャリアでは、薬剤師だけでなく医療事務や産業医、医師、看護師など医療職種を拡大することで取引先を広げるほか、医師・看護師のスポットバイトのマッチングサービスを提供する子会社のオンコールとも協業しながら多様なニーズに対応し高成長を目指す。
(3) 製薬事業
第一三共エスファの3ヶ年目標として、2028年3月期に売上高1,000億円(前期比1.3倍増)、営業利益110億円(同2倍増)を掲げている。2023年3月期業績が売上高で787億円、営業利益で128億円、営業利益率16.3%の水準だったことから、達成可能な目標値であると弊社では考えている。今後も毎年2~4品目のAG製品を発売し、既存製品も含めてグループの調剤薬局での取扱いを増やすことで売上成長は可能と見られる。利益率の改善施策として、原価面では製品ごとの価格政策見直しや卸政策・流通経費の見直しに着手しており、経費面でもゼロベースで見直す方針を打ち出していることから、早ければ2026年3月期からその効果が顕在化するものと予想される。
今後想定されるグループシナジーの1つとして、同社の調剤薬局を通じて患者や薬剤師、医師などの声を反映した製品開発が可能になる点が挙げられる。同取り組みを推進することで、先発品や競合する後発医薬品よりも利便性の高い製品を開発でき、高いシェアを獲得できる可能性が高まり、これらをグループの薬局で販売し収益を拡大していくことができれば理想と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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