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米国株式:個人投資家に買い余力


※インベスコ・アセット・マネジメント株式会社が提供するコンテンツです。

グローバル・ビュー動画解説

約1分半でレポートのポイントを解説

米国株式:個人投資家に買い余力
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要旨

前向きの動きが継続する米国株式市場

足元での米国株式市場では、上昇基調が継続しています。今後、短期的にはFRB(米連邦準備理事会)の利下げが本格的に織り込まれることで上昇基調は続くと見込まれるものの、2024年後半は景気のアップサイドが見込みにくい中、米国の株価がおおむね横ばい圏で推移すると予想されます。

米国では個人投資家の「買い」が株価の下落を和らげてきた

こうした中で注目されるのが、米国の富裕層を含む個人投資家の投資行動です。2022年以降の米国では、家計が株価の下落時に積極的に株式を購入するという逆張り的な投資行動により、株価を支える役割を果たしてきました。

米国個人投資家は1.5兆ドル程度の超過キャッシュを保有

米国の個人投資家が株価下落の際に積極的に株式を購入できた背景として挙げられるのが、米国家計がコロナ禍以降、通常以上のキャッシュ資産を保有してきた点です。家計が保有するキャッシュの、年間の民間消費に対する割合を算出すると、2019年の平均値が88%程度であったのに対し、2024年3月末時点では95.7%でした(図表3)。1.5兆ドル程度とみられる家計の超過キャッシュが、将来、株式や債券などの金融資産に投資される可能性があると考えられます

前向きの動きが継続する米国株式市場

米国株式市場では、株価が上昇基調をおおむね保っています。6月中旬に公表された5月分のCPI(消費者物価)統計とPPI(生産者物価)統計がインフレの落ち着きを印象づける内容となったうえ、5月分の小売売上指標や6月分のミシガン大学消費者マインド指数が共に市場予想を下回り、米国景気の減速がより多くの指標で明らかになったことが、FRB(米連邦準備理事会)による年内における複数回の政策金利引き下げへの期待を高めました。6月分の米国PMI(購買担当者数)のように景気の改善を示す景気指標も発表されたものの、株式市場における前向きの動きはおおむね続いています。また、米10年金利も足元まで緩やかな低下傾向を維持しており、グロース株のパフォーマンスに好影響をもたらしています。

今後について、私は、景気減速とともに米国のインフレ率が年末にかけて低下トレンドをたどり、それが金融市場におけるFRB(米連邦準備理事会)の利下げへの本格的な織り込みにつながるという見方を維持しています。短期的には、その織り込みプロセスの中で、米国株の上昇トレンドが継続すると予想されます。もっとも、2024年後半から2025年にかけては、高水準の政策金利がもたらす悪影響がなお残る中、米国の実質GDP成長率が潜在成長率である1%台後半の水準、すなわち、「強すぎもせず、弱すぎもしない」水準に落ち着くとみられます。このため、株式市場においては企業業績への期待が株価のドライバーになるとは考えにくく、2024年後半から2025年にかけての米国の株価はおおむね横ばい圏で推移すると見込んでいます景況感に大きな動きがみられない中で、株式市場では個別企業の成長性や強みをこれまで以上に評価していく動きが強まり、銘柄選択の重要性が増していく展開になると予想されます

米国では個人投資家の「買い」が株価の下落を和らげてきた

こうした中で注目されるのが、米国の富裕層を含む個人投資家の投資行動です。FRBは米国株式市場における主体別売買データを四半期ベースで公表していますが、それによると、米国の家計は2022年にFRBが利上げを開始して以降、逆張り的な投資行動をすることが多かったことがわかりました米国のS&P500種指数は、FRBによる急速な利上げに伴い、2022年1-3月期から3四半期にわたって下落を続けましたが、その間、米国家計はネットで5,000億ドル程度の株式の買い手となり、株価を支える役割を果たしました(図表1)。

その後、株価の上昇が続いた2023年1-3月期と同4-6月期には米国家計は株式の売り手に転じましたが、株価が下落に転じた同7-9月期には再びネットでの買い手となりました。2024年1-3月期は、株価の上昇基調が続く中でも、ネットの買いを継続させました。

(図表1)米国株式市場における主体別ネット購入額の推移(四半期ベース)

米国個人投資家が保有する超過キャッシュは1.5兆ドル程度

米国の個人投資家が株価下落の際に積極的に株式を購入できた背景として挙げられるのが、米国家計がコロナ禍以降、通常以上のキャッシュ資産を保有してきた点です。米国家計の金融資産は、2024年3月末時点で、122.5兆ドル(1.85京円)でしたが、そのうちキャッシュ(現預金とMMFの合計額)が18.3兆ドルと、15.0%を占めました(図表2)。これは、コロナ前の2019年末における14.3%を大きく上回る水準ではなく、その意味では、家計のキャッシュ比率は高すぎる水準とは言えません。しかし、家計によるキャッシュ保有が、主として、日常の消費に伴う取引的な動機や突然の出費に対する予備的な動機に基づくものという見方に立つのであれば、適正なキャッシュの水準は、年間の消費額に対するキャッシュの割合を基準に考えるべきであると思われます。こうした観点から、家計が保有するキャッシュの年間の民間消費に対する割合を算出してみると、コロナ前の2019年の平均値が88%程度であったのに対し、2024年3月末の計数は95.7%でした(図表3)。金額ベースでは1.5兆ドル程度であるこの差額が、家計保有の超過キャッシュとして、将来、株式や債券などの金融資産に投資される可能性があると考えられます。米国家計が保有する超過キャッシュのほとんどがMMFの形で保有されていることから、今後、政策金利の低下とともに、株式市場への資金流入につながる可能性が見込まれますが、何らかの理由で株価が下落する場合には、家計の超過キャッシュが金利低下を待たずに株式投資に活用される可能性が高まります。その際は、米国の個人投資家が選好を強めているとみられるAI関連などのテクノロジー銘柄にその資金が入りやすいと見込まれます

(図表2)米国:家計の金融資産残高の推移

(図表3)米国:年間民間消費に対する家計保有キャッシュ(現預金+MMF)の割合

木下 智夫
グローバル・マーケット・ ストラテジスト

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