
2025年7月29日
Great Place To Work® Institute Japan
(株式会社働きがいのある会社研究所)
「働きがいのある会社」に関する調査・分析を行うGreat Place To Work® Institute Japan(本社:東京都港区、代表取締役社長:荒川陽子、以下GPTW Japan)は、2025年版 日本における「働きがいのある会社」若手ランキング(以下、若手ランキング)を7月29日に発表しました。
また、中規模部門において3年連続1位を獲得したフロンティアホールディングスに密着取材を行い、若手の働きがい向上に資する2つの代表的な施策 について、実施の背景や運営のコツを伺いました。
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【サマリ】
・「働きがい認定企業」(2023年7月~2024年9月調査実施 )の中から、特に若手(34歳以下)の働きがいに優れた企業を規模別に上位5社ずつ選出した。
・2025年版若手ランキング第1位は、ディスコ(大規模部門)、フロンティアホールディングス(中規模部門)、ヘルスベイシス(小規模部門)であった。
・中規模部門1位のフロンティアホールディングスに密着取材したところ、同社の成功要因は複数の施策が相互に連携している点にあった。中でも特徴的なのが、選考過程で丁寧に経営理念を伝え、共感した人材のみを採用する「価値観採用」と、毎週開催の"改革俱楽部"による「若手の声の吸い上げ」。これらの施策に加え、内定者期間からの関係構築や理念浸透の仕組みなども含めた包括的なアプローチが、働きがいの高い組織を実現している。
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2025年版 日本における「働きがいのある会社」若手ランキング発表の背景
近年、人材不足が深刻化する中、優秀な若手人材の確保と定着が企業にとって重要な経営課題となっています。若手従業員の働きがい向上は、人材確保にとどまらず、企業の生産性や競争力を高める重要な経営戦略として注目されています。給与や福利厚生といった「働きやすさ」と、職場の連帯感や仕事への誇り、成長実感といった「やりがい」の両方を兼ね備えた職場環境が求められる中、実際にどのような企業が若手から高く評価されているのでしょうか。今回、「働きやすさ」と「やりがい」の両面から評価した「働きがいのある会社」若手ランキングを発表するとともに、1位企業の成功施策について密着取材いたしました。
調査期間:2023年7月~2024年9月(2025年版調査)
参加社数:657社
評価方法:GPTWでは、ランキング参加企業で働く従業員にアンケート調査を実施し、その結果が一定レベルを超えた会社を「働きがい認定企業」として発表しています。本ランキングは、「働きがい認定企業」(2023年7月~2024年9月調査実施 )の中から、「若手従業員(34歳以下)の回答結果」、「若手従業員比率などの基本会社データ」の2つの評価観点において特に優れた企業を選出したものです。
2025年版 日本における「働きがいのある会社」 若手ランキング選出企業一覧
各部門(従業員規模別)の順位は以下の通りです。
※()内は前回(2024年版 若手ランキング)の順位
※詳細はこちら:https://hatarakigai.info/ranking/young/2025.html
⼤規模部門(1,000人以上)
1位(2位)ディスコ(製造業/東京都)
2位(―) SmartHR (サービス業(他に分類されないもの)/東京都)
3位(―) セールスフォース・ジャパン(情報通信業/東京都)
4位(1位)アメリカン・エキスプレス(金融業,保険業/東京都)
5位(―) Hilton(宿泊業,飲食サービス業/東京都)
中規模部⾨ (100-999人)
1位(1位)フロンティアホールディングス(不動産業,物品賃貸業/大阪府)
2位(―) テックタッチ(情報通信業/東京都)
3位(4位)Box Japan(情報通信業/東京都)
4位(3位)アチーブメント(学術研究,専門・技術サービス業/東京都)
5位(―) CrowdStrike(情報技術/東京都)
⼩規模部⾨ (25-99人)
1位(2位)ヘルスベイシス(情報通信業/東京都)
2位(1位)イベント21(サービス業(他に分類されないもの)/奈良県)
3位(―) Mahalo(分類不能の産業/神奈川県)
4位(―) Legaseed(学術研究,専門・技術サービス業/東京都)
5位(―) and US(製造業/富山県)
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507282821-O1-34y9R00E】
なぜ若手はこの会社で辞めないのか?3年連続1位の裏にある、リアルな実践策を独自取材
今回、3年連続で中規模部門1位を獲得した株式会社フロンティアホールディングスに、若手がイキイキと働きがいを持って働くことができている背景には何があるのか、GPTW Japanコンサルタントの岡部が、人財事業部長の片山様(以下、敬称略)にお話を伺いました。
※この記事はGPTWのHPで全文ご確認いただけます。本リリースではポイントを抜粋してお送りいたします。https://hatarakigai.info/library/report/20250729_4992.html
まずは経営理念に共感する人を採用する
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507282821-O2-08l7dfaE】
岡部 若手が働きがいを持って働けるために、会社として何を重視しているのでしょうか。
片山 経営理念の中に、「全従業員の物心両面の幸福の追求」とあるように、目指しているのは従業員の幸福です。これは従業員満足度ではありません。従業員満足度であれば、給料を上げて休暇を増やせば簡単に上げることができるでしょう。しかし、それは幸福とは言えません。幸福であるためには、その人がやりがいを持って仕事に向き合い、業務を通じて成長し、自分で成果を出す力を身に着けていくことが重要であると考えています。
そのうえで、どんな人がこの会社で成長し成果を出していけるか。それは、この理念に共感できる人、「全従業員の物心両面の幸福」を自分も追求したいという想いを持っている人です。そういう人に入社してもらうためには、選考というのが非常に重要となります。
岡部 具体的には、どのような選考プロセスなのでしょうか。
片山 たとえばうちの新卒採用におけるインターンシップや選考会では、まずはじめに社長が登壇して、経営理念について1時間近く話をします。そこで理念に共感できるかが前提としてあります。続いて、私からは幸福とは何か、という話をしていきます。働くことを通じて幸せになりたいという想いのある人が次の選考へ進んでいきます。次の段階では、職場体験をしてもらいます。実際に13ある拠点に行って、(お客様の許可を得たうえで)営業同行をします。こうしたプロセスで、フロンティアホールディングスで幸せに働けているイメージができるかどうか、候補者・会社双方で確信を持つことができれば内定となります。
岡部 採用に対して、会社として相当なリソースをかけていますね。
片山 それだけ大変ではありますが、ここに時間と労力をかけた方が後々の苦労は減ると考えています。
ポイント解説
同社の成功の核心は「価値観採用」の徹底にあります。社長自らが1次選考で経営理念を1時間語り、人財事業部長がPERMA理論で幸福観を説明し、全拠点での職場体験まで実施する。これほど価値観の適合度確認に時間をかける企業は稀です。その結果、同社は、今年度は約60名と多くの人数を新卒採用していますが、一方で入社後の3年以内離職率は世の中平均の3分の1以下と低く、採用数の拡大と低離職率を両立することに成功しています。
価値観が合わない人材を採用してしまうと、どれだけ優れた働きがい向上施策を実施しても効果は限定的です。同社は採用段階で価値観のミスマッチを防ぐことで、その後の様々な施策の投資対効果を最大化しています。
内定後も接点を作り続け会社に対するエンゲージメントを高める
岡部 内定者育成については、どのようにアプローチしていますか。
片山 内定者の中で可能な人はアルバイトとしての受け入れをしています。内定者期間から会社で実務経験を積むことが出来ます。年によって担う業務は異なりますが、たとえば電話営業や、お客様との契約手続きのサポート業務などをしてもらいます。内定者期間でしっかりと助走をできることが、入社後の活躍につながると考えています。
その他、フロンティアホールディングスでは「サンキューレター」のクラウドサービスを導入しています。従業員同士が感謝のメッセージを送り合っており、従業員数は300名程度でありながら、月間で2万通以上のやりとりがあります。そこに内定者も入ってレターを送り合っているので、入社する前から内定者同士や従業員との結びつきは強いです。
ポイント解説
内定~入社までの期間も手を抜くことなく会社との接点を作り続けることができています。
特に、月間2万通以上も「サンキューレター」が飛び交うほど感謝を伝え合うカルチャー(文化)が社内に浸透し切っている点が素晴らしく、それが内定者及び若手従業員が人的ネットワークを社内で構築・維持することにも奏功しています。
実際に画面を見せていただいたところ、どんなに短い感謝の言葉であっても、社長をはじめとした経営陣が積極的に拍手を送っていることが伺えました。経営陣の積極的な参加が、「サンキューレター」を送り合う文化の定着を支えています。
フィロソフィー研修を通じて、経営理念と日々の行動の紐づけをおこなう
岡部 フィロソフィー研修とはどのようなものですか。
片山 会社としての考え方と言える経営理念を日々の行動に落とし込んでいくために、どういう行動をしている人が理念を実現できているのかということを、若手だけではなく幹部含めた全従業員を対象にこのフィロソフィー研修で半期に1度・各2日間かけて学んでいきます。
岡部 あえてお伺いさせていただきますが、半期ごとに2日間の業務を止めて行うことで短期的な売上数字にも多少のマイナス影響はあるものと思います。そのことをどのように捉えていますか。
片山 社長が最も大事にしているのは従業員が幸せになれるかどうかということです。売上・利益のことだけを考えれば、フィロソフィー研修はしなくてもよいでしょう。しかしそれでは、経営理念で掲げている目的が達成できません。従業員が成長を感じ、成果を生み出してやりがいを感じ、自分や周囲の人の幸せのために必要なだけの経済的豊かさを得られて初めて、会社の目的が達成されます。そのためにこのフィロソフィー研修は必要なものだと捉えています。
ポイント解説
いかに経営理念を組織に落とし込んでいくかというのは、多くの組織が抱えがちな課題です。同社はこの問いに対する答えとして「抽象(経営理念)と具体(日々の行動)の反復」であるという結論を出しているのだと受け止めました。
よくあるのが、こうした研修を若手だけを集めて実施するケースですが、全従業員が参加することで、グループで先輩やリーダー層の話を聞いて考えや学びを深める機会にもなっており、特に年次の浅い従業員にとって非常に重要な機会になっているのではないでしょうか。
「改革俱楽部」で若手の声を吸い上げる
フロンティアホールディングスでは、毎週月曜日に20~30名くらいが会社に集まって、食事やお酒も飲みながらテーマについて議論し合う「改革倶楽部」という場があります。GPTWコンサルタントの岡部が実際にその会を見学し、企画者の中山様(以下、敬称略)にインタビューさせていただきました。
岡部 この「改革倶楽部」はどのような経緯でスタートしたのでしょうか。
中山 もともとの発端は、会社の従業員数が増えてくる中で、現場の若手従業員が抱える小さなモヤモヤや業務に対して感じる課題感が、上まで上がって来づらくなったことでした。現場の声を吸い上げる機会として、この「改革倶楽部」はスタートしました。
岡部 実施をしていて、どのような手ごたえでしょうか。
中山 開始当初はいろいろな改善の声が出ましたが、毎週やっているのである程度改善の声も減ってきて、だんだんと相互交流の場としての色が強くなってきました。ここ1か月くらいはモデルチェンジをしていて、個々人の価値観・願望を明確にする場としてアジェンダを組んでやってみています。なぜこの会社で今の仕事を頑張っているのかということを明確化し共有し合うことを企図しています。
ポイント解説
「改革俱楽部」を見学していて印象的だったのは、場の心理的安全性の高さです。若手従業員が、自身の考えが整理されていなくても、まず話してみるということが自然にできる場になっていました。様々な部署・年次の人たちが集まっているので、接点があまりない人もいるはずですが、会社としてのカルチャーを非常に感じることが出来る機会でした。
不動産業界は、店舗ごとの独立性が比較的強く、他店舗の人との接点や交流が薄くなりがちです。そこでこのような交流イベントを実施するケースはよくありますが、交流だけを目的としたイベント企画というのは結局継続できないことが多いです。「改革俱楽部」は交流だけではなく、自身の価値観の再認識という別の主目的もあることがミソだと思います。また、参加者のお二人のように、参加側それぞれが自分にとっての目的意識を持てている点も素晴らしいです。
Great Place To Work® Institute Japan コンサルタント 岡部 宏章 総括コメント
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507282821-O9-rcM46r0m】
今回お話を伺って非常に重要だと思ったのは、採用からはじまる一連のプロセスすべてで一貫性持ち、かつ様々な工夫がなされているということです。単発的な施策や取り組みだけでは、一時的に若手の意向が上がることはあるかもしれませんが、中長期的な働きがい向上という意味では不足です。
同社の成功要因は、価値観採用による土台づくり、内定者期間からの継続的な関係構築、経営理念の行動レベルでの浸透、そして若手の声を拾う仕組みという4つの要素が相互に連携していることです。特に、社長をはじめとした経営陣が各施策に直接関与し、トップダウンとボトムアップの両方向からアプローチしている点が印象的でした。
このような一貫したプロセスの構築を支えているのは、経営理念「縁ある人への価値ある貢献と全従業員の物心両面の幸福の追求」の達成を会社の最優先事項として捉える姿勢です。組織における全ての活動はこの経営理念に帰着すること、業績はその後についてくるものだという社長の信念があるからこそ、ここまで手間や工数を惜しまず、取り組みが継続できます。
我々GPTWは、組織の働きがいを規定するのは良いカルチャーであると考えています。大上段にある経営理念から一貫した人事戦略があり、それに基づいた施策や取り組みを継続的に続けていることが、組織の良きカルチャーを醸成し、結果として3年連続の「働きがいのある会社」若手ランキング中規模部門1位に繋がっているのだと思います。
「働きがいのある会社」ランキング及び若手ランキングについて
ランキング参加企業にアンケート調査を実施し、その結果が一定レベルを超えた会社を「働きがいのある会社」として世界約170ヶ国で発表しています。アンケート項目と評価基準はグローバル共通です。
日本では従業員規模により、大規模部門(1,000人以上)、中規模部門(100-999人)、小規模部門(25-99人)の3カテゴリーに分けて発表しています。
「働きがいのある会社」若手ランキングは、「働きがい認定企業」(2023年7月~2024年9月調査実施)の中から、「若手の働く人へのアンケートの結果」、「若手従業員比率などの基本会社データ」の2つの評価観点において特に若手(34歳以下)の働きがいに優れた企業を選出したものです。
調査内容
「働きがいのある会社」調査は、GPTWが提唱する“全員型「働きがいのある会社」モデル”に基づく2種類のアンケートで構成されます。
①働く人へのアンケート
選択式設問(60問)・自由記述式設問(2問)・属性・認識を問う設問(8問)に、働く人が無記名で回答
②会社へのアンケート
企業文化や会社方針、人事施策(採用、経営層からの意見浸透、従業員からの意見聴取、人材育成、ダイバーシティ、ワークライフバランス、社会・地域貢献活動など)の具体的な取り組み内容を会社として回答
Great Place To Work® Instituteについて
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202507282821-O8-ga2qUyTX】
Great Place To Work® Institute は、約170ヶ国で年間21,000社以上の働きがい(エンゲージメント)を調査し、一定水準に達した企業を「働きがいのある会社」認定・ランキングとして各国の有力メディアで発表している世界的な調査機関です。30年間のデータに裏付けされた方法論を用いて評価を行う認定・ランキング制度は、企業における採用ブランディングやIR・人的資本開示の目的で広く活用されています。日本においては、株式会社働きがいのある会社研究所がGreat Place To Work® Institute よりライセンスを受け、Great Place To Work® Institute Japan(GPTW Japan)を運営しています。