IXナレッジ Research Memo(5):大手顧客からの安定受注、DX案件加速、人材マネジメント力が強み(2)
3. 人材マネジメント力
同社は、人材の「採用」「育成」「処遇」における人材マネジメント力が奏功し、人材不足が叫ばれる業界においても計画どおりの人材確保を実現している。
(1) 採用
同社にとって、「人材」が差別化の源泉であることに疑いの余地はない。人材獲得競争が厳しいなか、これまで毎年継続的に50~100名の新卒採用を行っており、2020年4月に77名、2021年4月に84名、2022年4月に82名、2023年4月に74名、2024年4月に90名(IXIで89名)、2025年4月にXX名が入社した。システムインテグレーター間の人材獲得競争は益々激しさを増している。その中で1000人規模以上の大手・中堅SIベンダーでは相対的に計画どおりの人材確保ができており、同社はそのグループに入る。近年では、事業会社(ユーザー企業)もIT人材の採用に積極的に取り組んでおり、IT人材の獲得競争は業界を横断して行われるようになっている。このような状況で同社は、オンライン採用方式を活用し、距離の壁により採用が難しかった地方の優秀な人材の獲得にも成功している。数年前からは中途採用にも力を入れており、即戦力の補強手段として定着してきた。2026年4月入社の新卒社員の採用も前年並みを想定している。
一方、同社のパートナー企業は全国に40社以上あり、プロジェクトの組成や需要の変動への対応に不可欠な存在となっている。同社とパートナー企業は、プロジェクトのなかでは一心同体であり、同社はパートナー企業の従業員を含めて教育を行う。同社の外注費は8,562百万円(2024年3月期)であり、売上原価の50.8%に相当することからも、その存在の大きさがわかる。
(2) 育成
新入社員は半年間の研修(集合研修3ヶ月、OJT3ヶ月)を経て各部門に配属されるが、同社の手厚い研修・新人サポートは“人を育てる環境が整った会社”として学生の間でも評価が高い。また、事業部によりプレゼンテーションが行われ、自ら配属希望を提出できる形式になっている。更に配属後のスキルアップ研修などを充実させることにより、モチベーションの維持・向上を図っている。
また、同社は「DXニーズへの対応」を戦略として掲げており、クラウドネイティブ人材の育成にも注力している。AWSの技術者育成では、2022年12月にAWS認定資格取得数が200を超える企業として「AWS 200 APN Certification Distinction」に認定されるなど、積極的な人材投資を行っている。近年では、Microsoft Azureの技術者育成にも注力している。また、クラウド以外でも、RPAやアジャイル開発、ブロックチェーンなど先進技術の習得に力を入れている。2024年3月期末のDX関連の取得資格数の合計では669資格に達している。今後も顧客DXニーズへの対応力強化の一環として資格取得者を育成する計画である。
(3) 処遇
働き方改革にも積極的に取り組んでいる。新規採用に占める女性の比率は4割近くに上り、全体でも女性SE比率は約2割となっている。女性の育児休業取得率100%が示すように、女性にとって働きやすい環境を整えている。2022年4月には「おかえりなさい制度」を開始した。一度退社した人材を復帰しやすくする制度で、特に子育てや介護などを理由に退職した人材を復帰しやすくした。数年前から残業削減にも取り組んでおり、平均残業時間は約14時間と業界平均を下回る。テレワークも管理部門を中心に以前から導入しているが、コロナ禍で更に全社的な動きへと加速した。また、同社は「健康経営」にも積極的だ。特に活発なのはスポーツで、野球、サッカー、フットサル、バスケットボール、テニスなどのチームが組成され、同業種内で競うリーグ戦で優勝を争うレベルのチームも多い。活発なクラブ活動は横断的な社員のつながりを築き、健康経営のみならず社員の生きがいの創出にも寄与している。社内にストレッチルームを開設するなど、健康維持による生産性の向上にも積極的だ。このような取り組みが認められ、2021年3月には健康優良企業「金の認定」を取得した(2025年3月も継続取得)。また、2024年3月には、同社が掲げている健康経営宣言「安心・安全な職場環境づくり」、「社員ならびに家族の健康の維持増進」の取り組みが評価され「健康経営優良法人2024(大規模法人部門)」にも認定された(2025年3月も継続認定)。ちなみに、同社の平均勤続年数は15年2ヶ月に達しており、その定着率の高さが職場の魅力を表している。
4. 中長期のM&A加速・グループ拡大を見据えて「グループパーパス」を策定
同社は、2024年10月で経営統合から25周年を迎えた。元々2つの企業が合併した企業であり、その後も複数のM&Aの実績がある。2024年4月には、グループ一丸となった経営体制を構築していく企業風土の醸成を目的として「グループパーパス」を制定した。グループパーパスを改めて策定する背景には、今後M&A・企業連携を加速し、グループが拡大していくことが考えられる。グループ各社がこれまで築き上げた事業の礎をなす経営理念を尊重しつつ、グループが共通して持つべき考え方や価値観を今回整理した。主文は「社会とITの未来をともにつなぐ(“Connecting people one world”/想い:IKIグループは、共創によりITと社会を繋ぎ、豊かな未来を創造します)」とした。また、“共創”を実現するためのバリュー・土台として、技術力、顧客満足、持続的社会への貢献、健康経営の4点が位置付けられた。
M&Aの体制も、来た案件を検討する属人的な体制から意思を持って探索し、スピーディに検討を行う組織体制に進化する。M&Aのタイプとしては、業種の拡大(実例としてシーアンドエーコンピューター)、地域展開、DX関連新技術の強化などが想定できる。同社はほぼ無借金に近い強固な財務基盤を維持しており、積極的なM&A戦略を行う余力を有している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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