オービーシステム Research Memo(7):既存事業の拡大と新事業の創出・拡大で連結売上高100億円規模を目指す
2. 中期経営計画
2024年5月に単体の中期経営計画(2025年3月期~2027年3月期)を公表したが、H&T社の買収に伴い同年10月に連結ベースの計画に修正した。2027年3月の売上高は単体で85億円を目標とし、さらに業務提携やM&Aなど新事業の創出・拡大により連結で100億円規模を目指す点は変わらないが、利益目標は変更し、営業利益を9.3億円から10.4億円に、当期純利益を7.2億円から7.6億円にそれぞれ引き上げた。
中期経営計画では、「既存事業の拡大」と「新事業の創出・拡大」の2軸で成長を加速させる。業務システム開発力・人材の計画的な強化と特徴ある技術/ソリューションを保有する企業との業務提携により新たな付加価値を提供し、新たな取引先を開拓し既存事業を拡大する。また、幅広く協業できる企業との業務提携・M&Aにより新事業を創出・拡大する戦略だ。
既存事業については、銀行オープン勘定系ソフト開発への継続的対応、保険系システムのマイグレーションニーズの拡大、電力会社の脱メインフレームの動きの拡大、自治体標準化ニーズの拡大等、「2025年の崖」に代表される銀行・社会等のインフラ領域でのオープン化、マイグレーションニーズが依然として増大している。この状況に対応するためには計画的な開発人員強化が最大の課題だが、同社では新卒採用のみならず経験者の中途採用、従業員の友人や知人をリクルートしてもらうリファラル採用、過去に退職した社員を再雇用するアルムナイ採用等、採用手法を多角化させて社内人材を拡大していく考えだ。同社は、経験豊富な社内人材が中心となって取引先の開発をけん引できる強みを生かして、取引先からの信頼を得て受注拡大しているため、社内開発人材の確保の優先度合いは極めて高い。加えて、現在120社超のBP企業との連携を深めるとともに、開発品質を維持・確保できる新規BPとの連携拡大も進めていく。2024年4月時点では社内人材は531名、BPは369名と合計で900名体制であるが、2026年4月には合計で1,300名以上を目指す方針であり、当初計画の目標としていた社内600名体制を拡充した。実績としては、2024年4月には前年の2倍となる新卒52名を採用し、2025年4月も新卒49名を採用した。また、H&T社とGC社で130名の人材と70名近くのBPを確保した。なお、社員の半数以上が20代、30代の若手社員であり、若手社員によるイノベーティブな事業推進にも取り組んでいくことを企図している。
また、教育投資を強化することで、専門性を有する人材育成と業務システム開発力を強化する。社内の教育制度を拡充し、資格取得をサポートしていく。AIやIoT、ロボティクス関連、クラウド関連等の新技術は、新デジタル分野として同社に必須の技術であり、技術革新へ対応していくためリスキリング支援を手厚くし、部門間異動を柔軟にすることで事業変革への対応、社員のやる気をサポートしていく。
さらに、既存取引先との事業規模拡大に対応しつつ、生産性を向上していくために、特徴ある技術/ソリューションを持った企業との業務提携やM&Aを加速し、取引先への新たな付加価値の提供や新たな取引先の開拓によって事業の成長スビートを加速させる。
業務提携については、2024年4月にAIと金融工学を活用した金融WEBサービス・プラットフォームを提供するMILIZEと、同社CLIPシリーズにAIを活用して臨床検査分野でのシステム操作をサポートする機能を実装する共同開発を開始し、2025年4月にはAI機能を搭載し音声によるシステム操作機能を備えた「CLIP Ver5.1 AI」の販売を開始した。既に「CLIP」を導入している全国130の医療機関からのニーズでもあったため、この機能強化により全国の病院等取引先の拡充が見込まれる。また、2024年5月には韓国のコリアファステックが展開するマイグレーションソリューションシステム「Smart Conversion Suite」の日本における販売代理店・保守サービス提供契約を締結した。本システムは、古いシステムの状況分析、設計文書の自動出力が可能であり、この分析結果を利用して新しいシステム基盤に自動変換する機能を備えたシステムの変換ソリューションである。本システムは2007年のリリース以来200超の顧客の導入実績があり、手作業でのマイグレーション作業に比べて開発時間で54%減少、開発費用の44%節減を可能にする。この提携により、日本におけるマイグレーション、モダナイゼーション事業分野におけるソリューション展開が期待できる。現在は、システム開発案件での実証テストなどを進めている段階だ。
M&Aについては、既述のとおり2024年4月にH&T社を完全子会社化した。H&T社は、北海道札幌市に拠点を構え、2015年より業務系、組込み系ソフトウェアの開発を行っており、主要取引先には富士ソフト(株)、東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ(株)(東京エレクトロン<8035>のグループ会社)等がある。車載系などの組込み系ソフトウェアの開発に精通した技術者を擁していることから、東阪名の取引先から増加する開発案件をH&T社との連携によりキャパシティの拡大と開発期間、コスト効率の最大化を図る、同社DX開発案件を強化する、同社の教育システムを活用してH&T社の体制強化を行い、IT産業振興に取り組む札幌市のソフトウェア開発案件への取り組みを加速するなどのシナジー効果を見込んでいる。既に、H&T社の人材が参加した同社の開発プロジェクトが進行しているようだ。2025年5月にはGC社を完全子会社化した。GC社は東京都千代田区に拠点を構え、1984年より有価証券管理システム、日銀即時決済システム(RTGS)、与信管理システムなどの金融系のシステム開発、特にメガバンク系のシステム開発を行っており、売上の8割を占めるBIPLOGYとは40年近い取引を継続している。売上の約7割が金融系システムの業務であり、残り16%が流通系、14%が公共系のシステムである。同社とは業務領域、技術面で親和性が強く、増加する金融系/公共系のGC開発案件を同社の開発リリース、ノウハウにより開発キャパシティの拡大と開発期間、コスト効率の最大化が期待される。また、同社は地域金融機関の基幹系に、GC社はメガバンクの市場系/資金運用系の開発にそれぞれ強みを持つため、両社の取引先に対する開発対応範囲の拡大が可能だ。さらに、H&T社の開発プロジェクトにも対応していくことで、グループ全体でのさらなる開発効率の拡大など大きなシナジー効果が期待される。
なお、見直した連結ベースの中期経営計画においては、キャッシュ創出とキャピタルアロケーションの計画を追加した。3ヶ年の既存事業の成長と連結経営による事業拡大など営業活動によるキャッシュ創出を約17億円、政策保有株式売却などその他のキャッシュ創出を約4億円見込み、これをM&AやR&Dなどの成長投資と配当など株主還元に充てる計画だ。成長投資に当たっては、既存事業強化のためのリソース強化、新事業創出のためのアセットの確保に注力する。営業利益率10%超、ROIC10%超の確保を投資判断基準に掲げている。R&Dは、AI、DX関連事業への対応を強化し、業務提携の加速、新規商材開発、社内研究開発の推進を図る。また、1株当たり純利益(EPS)と1株当たりキャッシュ・フロー(CFPS)を経営指標とし、EPSは2026年3月期に前期比25%増益、2027年3月期に同27%増益を計画し、その増益率を上回る各期26%、37%のCFPSの成長、事業拡大を加速させる。M&A、R&Dによる営業利益の成長確保とともに、のれんや研究開発費の償却などが加わるEBITDAはそれを上回る成長を確保する計画だ。なお、株主還元方針についても、目標とする配当性向を見直した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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