電通PRコンサルティングの企業広報戦略研究所が、上場企業を対象とした『第6回企業広報力調査』結果を発表
企業広報戦略研究所が行った第6回「企業広報力調査」によると、日本の上場企業の広報部門が最も重視するステークホルダーは「株主」「顧客」「個人投資家」とされ、株主と投資家が広報活動の重要ターゲットに位置づけられています。調査では、広報活動の測定方法として「報道件数」や「株価動向」が上位に挙がる一方で、情報発信力(PESO活用力)に対する評価が高いことが明らかになりました。また、広報力スコアでは「電力・ガス」業界が首位を維持し、「輸送用機器・精密機器」が次につけています。広報部門は「中・長期的な広報戦略の作成」や「経営戦略との連携を図る広報戦略の立案」を求められており、業務の多様化が進んでいる中での戦略設計がますます重要になっています。
2024年11月21日
企業広報戦略研究所(C.S.I.)
(株式会社電通PRコンサルティング内)
上場企業を対象とした「第6回企業広報力調査」結果
広報部門が重視するステークホルダー・ターゲットは、「株主」「顧客」「個人投資家」。「個」を大切にする傾向に
今後強化したい活動「中・長期的な広報戦略の作成(目標設定力)」が1位
企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、日本における企業の広報活動の実態や課題意識を把握することを目的に、2014年から隔年で上場企業を対象に「企業広報力調査」を実施し、企業広報戦略研究所独自に設計した「価値づくり広報モデル」に基づき分析をしています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O8-LkezRlX5】
※「価値づくり広報モデル」の詳細は本文下部参照
「価値づくり広報モデル」は企業の広報活動を3つのプロセスに分類。各プロセスに3つ、合計9つの「広報力」を設け、日本の上場企業の広報活動の全体的な傾向や課題について明らかにできるモデルです※ 。
調査は、2024年5月19日から8月20日に、上場企業約3,800社の広報担当責任者宛てに調査票を送付し、実施しました。本リリースは、回答をいただいた533社のデータを集計した結果です。
調査結果のポイント
1. 企業の広報力の現状は、「PESO活用力」※が最も高く、情報発信型の広報活動がメイン情報発信前の「ファクト力」、コミュニケーションによる社会への影響を測る「インパクト評価力」の向上に課題
※「PESO活用力」の定義については本文下部参照
2. 広報力スコアの業界別ランキング1位は前回同様「電力・ガス」
2位は、前回最下位の「輸送用機器・精密機器」が躍進
3. 重視するステークホルダー・ターゲットは1位「株主」、2位「顧客」、3位「個人投資家」、
4位「従業員とその家族」。個人投資家や従業員など、「人的資本」が重要に
4. 広報部門がカバーするテーマは増加傾向で、広報業務は多様化
「中・長期的な広報戦略の作成」や「経営戦略とリンクした広報戦略の立案」の強化が課題
5. 広報の効果測定は、「新聞や雑誌で報道された件数、分量」など、定量的な項目が上位「株価の動向」は、前回より増加
全体傾向
1. 企業の広報力の現状は、「PESO活用力」が最も高く、情報発信型の広報活動がメイン情報発信前の「ファクト力」、コミュニケーションによる社会への影響を測る「インパクト評価力」の 向上に課題
広報に関する90項目の設問への533社からの回答を9つの広報力に分けて分析したところ、「PESO活用力」(40.6点)が他の広報力よりも高く、1位となりました。以下、「課題把握力」(38.6点)、「広報組織力」(36.3点)、「クリエイティブ力」(35.0点)と続きます。
一方で、「エンゲージメント力」(27.8点)、「ファクト力」(24.4点)、「インパクト評価力」(13.2点)のスコアが低い結果でした。
この実施率が低い3つの力は、価値づくり広報の視点で不可欠な要素です 【図表1】。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O1-3Jgu1n6N】
広報課題を把握し目標を設定した上で活動を行った結果、自社の経営や事業、さらには社会にどのような影響(インパクト)を与えているのかを把握しなければ、企業価値創造に結びつく広報への進化は難しいと考えます。
また「ファクト力」は、広報目標達成に向けて、企業の活動実態(ファクト)をプロデュースする能力と定義しています。ファクトがあって初めて広報・PR活動が成り立つため、この広報力の強化に取り組むことが重要です。これらは、今後、企業広報を考える際の課題だと考えます。
「価値づくり広報モデル」について
これからの企業の広報活動には企業価値創造の視点をより強く意識する必要が高いと考え、そのために必要な戦略・戦術を棚卸しし、設計を行いました。 「価値づくり広報モデル」と名付け、そのプロセスを、根幹をなす「Strategy(戦略)」、それを受けて行う「Activity(活動)」、基盤として押さえるべき「Management(組織)」の3つに整理し、全部で9つの広報力を設定しました。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O7-vG5f6Ck2】
※9つの広報力の定義は、本文下部参照
業界ランキング
2. 広報力スコアの業界別ランキング1位は前回同様「電力・ガス」
2位は、前回最下位の「輸送用機器・精密機器」が躍進
企業の広報力を業界別で見てみると、1位は「電力・ガス」(50.5点)、2位「輸送用機器・精密機械」(41.4点)3位は「食料品」(39.7点)という結果になりました。1位は前回調査と同様ですが、2位の「輸送用機器・精密機械」は前回最下位から大きく躍進しました。また、前回8位だった「金融・証券・保険」は4位(38.3点)、9位だった「電気機器」は5位(34.9点)と順位を上げています。
「輸送用機器・精密機器」は、「広報組織力」が15業界中最も高く、「食料品」は「リスクマネジメント力」が「電力・ガス」に次いで高く、「金融・証券・保険」は「クリエイティブ力」が高いなど、業界によってさまざまな特徴が見られました。
一方、「情報・通信」は前回5位から12位へ、「繊維・化学・医薬」は3位から7位へ、「運輸・倉庫」は4位から8位へと下がっています。「繊維・化学・医薬」や「運輸・倉庫」は「クリエイティブ力」「PESO活用力」の減少が大きく、 広報活動が思うように実践できていない可能性があると考えられます 【図表2】。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O3-47WeHc52】
※広報力スコア算出方法は、本文下部参照
重視するステークホルダー・ターゲットの変化
3. 重視するステークホルダー・ターゲットは1位「株主」、2位「顧客」、3位「個人投資家」、4位「従業員とその家族」。
個人投資家や従業員など、「人的資本」が重要に
広報活動で重視するステークホルダーやターゲットは、1位「株主」(92.7%)、2位「顧客」(86.5%)で、過去5回の調査順位と同様となっています。3位「個人投資家」(76.7%)は今回から聴取していますが、同じく今回から聴取の「機関投資家」(75.8%、5位)より順位が高くなりました。
この広報ターゲットを10年前の第1回調査(2014年)と比較すると、「顧客」を除く全てのターゲットで割合が伸びており、広報部門が意識しなければならないステークホルダー・ターゲットの多様化が見て取れます。特に、「従業員とその家族」(第1回53.7%→今回76.0%)や「就活生・学生」(同40.1%→72.0%)の著しい伸びからは、人的資本、つまり「個人」を重視する傾向が高まっていることがうかがえます 【図表3】。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O4-B0VXL2fa】
担当業務テーマ/今後強化したい広報活動
4. 広報部門がカバーするテーマは増加傾向で、広報業務は多様化
「中・長期的な広報戦略の作成」や「経営戦略とリンクした広報戦略の立案」の強化が課題
広報部門の担当するテーマは、「トップのメッセージ、企業ビジョン」(83.5%)が前回同様1位となりました。次いで、「企業ブランディング」(77.9%)、「経営戦略・事業戦略」(72.6%)、「商品・サービスPR」(68.3%)も多くの企業が業務テーマであると回答しており、 広報が担う役割が多岐にわたっています 【図表4】。
今後強化したい広報活動では、1位が「中・長期的(3年程度~)な広報戦略を作成」で、唯一過半数の企業が今後強化したいと考えており、3位の「経営戦略とリンクした広報戦略を立案」とともに、「目標設定力」の項目の選択率が高くなっています。担当する業務テーマと併せ、経営戦略とリンクした中・長期的広報戦略の策定を重要視している企業が増加傾向にあることがうかがえます 【図表5】。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O6-wt85xd4y】
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O2-wOMl8gSX】
効果測定のトレンド
5. 広報の効果測定は、「新聞や雑誌で報道された件数、分量」など、定量的な項目が上位「株価の動向」は、前回より増加
広報活動の効果測定方法では、「新聞や雑誌で報道された件数、分量」 が1位で、58.7%の企業が実践していることが分かりました。続いて「自社Webサイトのアクセス数・滞在時間など」 (52.2%)、 「Webメディアでの報道量」 (50.5%)も約半数の企業が実施していることが分かりました。
上位に挙がった成果測定方法は、広報施策のアウトプットを定量的に測るものが多くなりました。また、「株価の動向」(前回32.9%→今回37.7%)が増加しており、重要広報ステークホルダー・ターゲットで「株主」「個人投資家」が多いことと呼応しています。また、「自社ソーシャルメディアアカウントのフォロワー数」や『いいね!』数(同25.3%→31.0%)、「ソーシャルメディアの分析」(同14.2%→23.3%)などソーシャルメディアを通じた広報活動を実施し、その成果もソーシャルメディア上で測定する動きも増加傾向にあることが分かりました 【図表6】。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O5-UmUb01zD】
第6回 企業広報力調査概要
■調査対象
日本の上場企業3,798社 広報担当責任者「上場会社基本ファイル(2024.4時点)」(東洋経済新報社)掲載の企業
■有効回答サンプル数:533社(回答率14.0%) 調査方法:郵送・インターネット調査
■調査期間:2024年5月19日~8月20日
■調査主体:企業広報戦略研究所(株式会社電通PRコンサルティング内)
※本リリース上のスコア構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、図表において加減の結果が小数第1位で異なる場合や、合計が必ずしも100%にならない場合があります。
「価値づくり広報モデル」 9つの広報力とスコアの算出方法について
本調査は、広報活動に関する設問(90問)を9つの広報力に分類し、各広報力を構成する10項目の基礎点を定めています。それに加え、当研究所の専門家パネル(研究者、メディア、広報実務家12人)の各メンバーが戦略的重要性が特に高いと評価した項目に点数を付与。基礎点に専門家評価の点数を加算し、総計100点で各広報力を算出しております。9つの広報力の定義は下記の通りです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411210345-O9-ps4fsqZu】
※ オウンドメディア(Owned Media)・アーンドメディア(Earned Media)・ペイドメディア(Paid Media)、シェアードメディア(Shared Media)の略称.
〈お願い〉
本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。
企業広報戦略研究所とは
(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)
企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて調査・分析・研究を行う、株式会社電通PRコンサルティング内の研究組織です。
2013年12月設立 所長:阪井完二
企業広報戦略研究所サイト http://www.dentsuprc.co.jp/csi/
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