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地デジ放送波を使った水蒸気量推定手法の試験観測を板橋区でスタート


2018年1月31日



国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)



地デジ放送波を使った水蒸気量推定手法の試験観測を板橋区でスタート

~都心の多数のビルを反射体として、ピコ秒の精度で計測~



【ポイント】

■東京都板橋区でNICTが開発した地デジ放送波を使った水蒸気量推定手法の試験観測を開始

■伝搬遅延量をピコ秒の精度で計測し、地表付近の水蒸気の分布を高解像度で観測

■NICT地デジ放送波利用の水蒸気観測技術が自治体と協定を結んで実施されるのは全国初



 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、東京都板橋区(区長: 坂本 健)と豪雨予測技術に関する研究開発における協力に関する協定を締結し、地上デジタル放送波が送信所から各家庭まで空中を伝わるときに大気中に存在する水蒸気の影響で発生する、わずかな遅延をピコ秒精度(ピコは、1兆分の1)で精密に測定することで、大気中の水蒸気量を推定する技術の実証を目的とした試験観測を開始します。大気中の水蒸気は凝結して雲粒になり、大きく成長し雨粒になると、雨となって地上に落ちてきます。この水蒸気の分布を正確に知ることが天気予報の改善につながり、降る場所と時間の予測が困難なゲリラ豪雨の予測精度の向上が期待できます。NICT がこの地デジ放送波による水蒸気観測技術に関して、自治体との協定を結び、試験観測を開始するのは板橋区が全国初になります。

 本試験観測は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「レジリエントな防災・減災機能の強化」の一環として行われます。



【背景】

 NICTでは、ゲリラ豪雨など局所的で激しい気象現象に対する防災・減災を目指し、フェーズドアレイ気象レーダなど雨を観測する技術の研究開発を進めています。一方、雨の源である水蒸気量(レーダでは見えない気体の状態の水)は気象予測に重要であり、この分布を把握することが早期予報の精度向上には必要で、新しい観測法として、地デジ放送波の遅延プロファイルの位相から電波の伝搬遅延を求め、地表付近の水蒸気量を推定する方法を開発しました(2017年3月9日プレスリリース)。この方法の実用化には、地デジ放送波の反射体の分布が異なる状況下での実証実験を行う必要がありました。



【今回の試験観測】

 試験観測の方法は、図1に示すように、板橋区役所の屋上に地デジ放送波受信装置(図2)を設置し、東京スカイツリーから放送されている地上デジタル放送波を受信します。受信には、東京スカイツリー方向に向けたアンテナに加えて、その反対方向に向けた別のアンテナを利用し、板橋区内の大きな建物からの反射波を受信することで、板橋区上空の水蒸気量を推定します。

 推定された板橋区上空での水蒸気量は、板橋区内の3地点に設置された移動式地上降水観測システム(図3)で測定される気温・湿度・気圧の情報と比較してその品質を検証します。板橋区役所屋上からは東京スカイツリーと反対方向に多数のビルが存在し、NICT本部(小金井市)での試験観測時よりも水蒸気量分布の解像度の向上が期待できます。

 なお、上記の移動式地上降水観測システムで得られる雨量に関するデータは板橋区に提供され、ゲリラ豪雨対策などの防災目的に利用されます。また、同時に埼玉大学に設置された新型の気象レーダ「マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダ」(図4)の品質評価にも利用される予定です。図5に地デジ放送波受信装置設置予定の板橋区役所と、移動式地上降水観測システムが設置予定の3地点を示し、積乱雲の発生から発達期の過程の観測を行います。



【今後の展望】

 推定された水蒸気量分布のデータは気象数値予測モデルのデータ同化に利用されます。気象数値予測の精度向上が実現できれば、ゲリラ豪雨による大雨予測、突風・強風予測の向上が実現し、防災・減災や日常生活の利便性の向上につながります。



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